(旧)理事長挨拶(H28.7.12)
山梨県立病院機構(県立中央病院・県立北病院)
理事長 小俣 政男 (Omata Masao)
H28.7.12
第二期中期計画初年度 (H27年度) の決算と今後の法人の取り組みについて
平成22年度にスタートした地方独立行政法人山梨県立病院機構は、H27年4月より、第二期中期計画が始まった。 その第二期中期計画の初年度が終了したので、報告致します。
A)決算の状況
① H27年度決算
総収入は 257.2億円 (H25 221.1億円、H26 225.5億円)、総支出は 243.9億円 (H25 207.3億円、H26 217.9億円) となった。 従って、収入は31.7億円伸び、支出は26億円増加した (図1)。
その結果、H27年の経常利益は13.3億円 (H25 13.7億円、H26 7.6億円)、純利益は12.8億円 (H25 6.7億円、H26 7.4億円) となり (図1)、法人化後6年で、 H24年度の16.5億円に次ぐ純利益を確保できた。
その結果、H27年の経常利益は13.3億円 (H25 13.7億円、H26 7.6億円)、純利益は12.8億円 (H25 6.7億円、H26 7.4億円) となり (図1)、法人化後6年で、 H24年度の16.5億円に次ぐ純利益を確保できた。
H27年度の当初計画では経常利益は、9億2,100万円、純利益8億5,500万円と想定したが、それらに比べ、 それぞれ4億1,200万円及び4億2,000万円の想定以上の利益を上げることができ、第二期中期計画の初年度を順調にスタートできた (表1)。
② 第一期中期計画5年間 (H22~H26年度) の純利益及び第二期中期計画初年度 (H27年度) の純利益
法人化発足直前のH21年度の累積損益は、-152.1億円であったが、H22年度からH26年度までの5年間の累計の純利益は42.6億円となり、 第一期中期計画が終了した (図2)。
この第一期中期計画中の純利益42.6億円は、第二期の建設改良費として、最新機器の購入等に用いる。
H27年度から始まった第二期中期計画では、更に強靭な経営体質を確立し、黒字の累積を第二期の5年間で34億円と想定しており、 計画初年度であるH27年度純利益12.8億円は、計画より4.2億円上回る順調なスタートを切ることができた。
H27年度から始まった第二期中期計画では、更に強靭な経営体質を確立し、黒字の累積を第二期の5年間で34億円と想定しており、 計画初年度であるH27年度純利益12.8億円は、計画より4.2億円上回る順調なスタートを切ることができた。
B)病院の現状と展望
① 救命救急医療体制の充実・強化
中央病院は、第3次救急医療を担う病院として、ドクターヘリやドクターカーを活用し、 迅速で効率的な医療を提供してきた。 更に、患者さんの重症度及び緊急性に柔軟に対応するために、3次救急のみならず、H21年度対比で2次救急 82%増 、1次救急他 90%増と、 3次救急に限定しない幅広い救急医療を行っているのが、近年の当院の救急医療の特徴である (図3)。 救急車搬送人数は急増しており、更にH27年度に開設した総合診療科と救命救急センターとが一体化した、幅広い救急医療体制の充実強化が図られている。
② 若手医師の育成
中央病院の医師総数をH13年から俯瞰して見ると、法人化当初のH22年度期首は144名、現在H28年度期首は185名と28%増加した (図4)。
なかでも、若手医師、即ち32名の初期研修医 と37名の後期研修医 (専修医) 計69名は、法人化発足H22年度期首41名と比し、68%増であり、 これは卒後6年以降の常勤医師の伸び率、H22年度期首103名であったものが、現在H28年度期首116名の13%増と比べると明らかに多い (図4)。
即ち、病院の中に若手医師が “溢れている” の感がある。最近、問題となっている、病院の活性化の根源である若手医師不足という問題が、 多くの職員の努力によって、当機構では全く様相が異なっているという点が指摘し得る。
若手医師の育成・強化の骨格となるのは、第一線の病院であっても臨床研究を遂行する指導体制の確立である。当機構では、初期研修2年終了時の研究発表として、 Cohort研究が推進され、その内容は極めて優れたものが多い。これは、当院に蓄積された臨床データ-を上級医と初期研修医が共同作業を行い、 臨床的研究成果として発表するものである。これらを含め、県立中央病院の学術活動として、H27年度英文論文は53、邦文論文は58、合計111。 また学会等の発表は、国外が25、国内551、合計576という膨大な数にのぼった (図5)
即ち、病院の中に若手医師が “溢れている” の感がある。最近、問題となっている、病院の活性化の根源である若手医師不足という問題が、 多くの職員の努力によって、当機構では全く様相が異なっているという点が指摘し得る。
若手医師の育成・強化の骨格となるのは、第一線の病院であっても臨床研究を遂行する指導体制の確立である。当機構では、初期研修2年終了時の研究発表として、 Cohort研究が推進され、その内容は極めて優れたものが多い。これは、当院に蓄積された臨床データ-を上級医と初期研修医が共同作業を行い、 臨床的研究成果として発表するものである。これらを含め、県立中央病院の学術活動として、H27年度英文論文は53、邦文論文は58、合計111。 また学会等の発表は、国外が25、国内551、合計576という膨大な数にのぼった (図5)
殊に、当院に併設されたGAC (Genome Analysis Center) で、解析された遺伝子情報と臨床データの統合により、質の高い英文論文発表が相次ぎ、 本年は15-20程度の国際誌への発表が予想されている。
次に、若手医師の国内のみならず海外での留学も奨励している。中でも、H27年度、北病院から海外留学者 (三澤史斉医師) が出た。H27年4月からH28年3月の1年間、 ニューヨークのThe Zucker Hillside Hospitalで、精神科で使用する薬剤 (クロザピン) 使用に関する臨床研究を行うため海外留学を行い、帰国した。 極めて目的の明確な留学であり、当県の医療の質向上に寄与するものと考えられる。当機構職員には、海外留学の際、本俸の70%が支給されるという規定があり、 彼はその第一号となり、それによって海外留学を行った。帰国後の研究成果が期待される。
次に、若手医師の国内のみならず海外での留学も奨励している。中でも、H27年度、北病院から海外留学者 (三澤史斉医師) が出た。H27年4月からH28年3月の1年間、 ニューヨークのThe Zucker Hillside Hospitalで、精神科で使用する薬剤 (クロザピン) 使用に関する臨床研究を行うため海外留学を行い、帰国した。 極めて目的の明確な留学であり、当県の医療の質向上に寄与するものと考えられる。当機構職員には、海外留学の際、本俸の70%が支給されるという規定があり、 彼はその第一号となり、それによって海外留学を行った。帰国後の研究成果が期待される。
③ 山梨県のがん拠点病院としての機能強化
当県には、がんセンターは存在しない。しかしながら、入院から外来への流れを癌治療の将来への主たる流れと考え、 H25年1月に通院加療がんセンター (ATCC) を発足させた。
H22年法人化発足当時のがん化学療法の治療例数は、入院月間200、外来200強と、ほぼ同数であった。その後、ATCC通院型がんセンターがスタートし、 入院での治療は、月間ほぼ200から300を推移しているが、外来でのがん治療患者数は月間600を超し、3倍強となっている (図6)。 総数も、直近のH28年3月で955例と、1000例を伺う勢いである。即ち、入院から外来への流れが実現し、更に、ATCCの機能強化、 例えば患者さんの精神的・経済的サポート等を開始している。
④ 医療の“Novelty”
2013年に設置されたGAC (Genome Analysis Center – ゲノム解析センター) で行われた、 遺伝性乳癌・卵巣がんの原因遺伝子であるBRCAの遺伝子解析に基づき (Sakamoto I et al. Cancer 2016; 122; 84-90)、H28年1月より、 従来治療法の無かった進行性卵巣癌に対して画期的新薬オラパリブ (PARP阻害剤) の日本初の投与が開始された。 これは、国際的に認められているManaged Access Program、或いはCompassionate Useの方式に乗っ取って、国際的第三者機関に申請を行い、 その認可のもとに開始された。
ロボット手術機器Da VinciのXi型の新規購入による癌の先端医療が開始された。従前より行われていた前立腺がんに加え、 新たに2016年4月より保険承認された腎がんのロボット手術がスタートした。更に、Da Vinci Xiによる広汎子宮全摘術が倫理委員会承認のもと、 先進医療を目指し、第一例目がH28年8月8日に行われた。
急増する肺がんは、社会問題化している。当院は、内科と外科が連携して呼吸器病センターを新たに発足し、 365日24時間対応の “肺がんホットライン” をスタートした。肺癌の年間手術例数は200例を伺う勢いであり、従来の5~7倍増である。 更に、リハビリテーション部との連携による癌リハはH28年4月より開始されている。
急増する肺がんは、社会問題化している。当院は、内科と外科が連携して呼吸器病センターを新たに発足し、 365日24時間対応の “肺がんホットライン” をスタートした。肺癌の年間手術例数は200例を伺う勢いであり、従来の5~7倍増である。 更に、リハビリテーション部との連携による癌リハはH28年4月より開始されている。
⑤ 山梨県におけるC型肝炎の完全撲滅と肝癌死亡者数の減少
本県は、人口当たりの肝癌死亡者数が東日本第一位であった。その8割がC型肝炎患者だった。 既に行った中央病院におけるC型肝炎のグローバル治験の結果 (Omata M. J Viral Hepat. 2014; 21:762-768、Lancet Infect Dis. 2015; 15: 645-653) 、 H27年5月よりC型肝炎の唯一の核酸アナログ製剤であるソフォスブビルが投与可能となり、当院でも444例の患者さんに治療が施され、99%の治癒率であった。
現在、本県は東日本における肝癌死亡者数第2位であり、更にC型肝炎の完全撲滅、延いては肝癌死亡者数の激減に努力を傾注している。
現在、本県は東日本における肝癌死亡者数第2位であり、更にC型肝炎の完全撲滅、延いては肝癌死亡者数の激減に努力を傾注している。
⑥ 精神科救急、児童思春期精神科医療の充実
北病院では、平成27年2月から開始された県の精神科救急医療体制の常時対応型病院として、救急患者を受け入れる体制を構築した。
また、児童思春期外来の患者数は年々増加しており、中央病院と北病院が相互連携し、北病院医師による 中央病院の思春期外来への支援も行い、 精神科救急及び児童思春期精神科医療の充実を図っていく。
⑦ DPC係数による中央病院の評価
病院の客観的評価としてDPC係数評価がある。図7に表された如く、H22年度DPC参加当初は341位だったものが、H26年度よりⅡ群になり、 H28年度は23位と位置付けられた (図7)。
第一期中期計画においては、当初の目標だった①経営の改善、②研修医の確保、③医療の質の改善を目指して五年間を遂行した。 H27年から始まった第二期中期計画においては、更に、医療をめぐる環境が大きく変化する中で、 健全な経営を続け、先進医療等を含む高度先端医療を行うと同時に、中央病院及び北病院が山梨県の基幹病院としての役割を発揮し、 “明るい笑顔・明るい挨拶”で患者さんを“早くきれいに治す”努力を続けて行きたい。
宜しくご支援のほどお願い申し上げます。