本プログラムの目的は、卒後臨床研修を通じて多様化する医療に対応できる人材の育成を行うことです。 指導医のもとで、医師としての人格と見識を磨き、将来専門とする分野に限らず、日常診療で頻繁に遭遇する Common Disease に適切に対応できるよう、プライマリケアの基本的な診療能力(態度、技能、知識)を身につけることを目的としています。
当院は、1973年より46年の長きにわたり、臨床研修指定病院として研修教育を行ってきました。 その経験を踏まえて、本プログラムは厚生労働省の「臨床研修の到達目標」を達成できるように計画されています。 各科とも症例は豊富で、症例検討会、抄読会も活発に行われています。 他科との交流も円滑であり、多くの指導医の指導を受けながら、プライマリケアに対応できる診療能力を習得することが可能です。
指導は各科ともにマンツーマンで行われますが、指導医、後期研修医、上級臨床研修医による手厚い指導、すなわち重層屋根瓦方式が確立しています。 臨床研修終了時には各科の認定医、専門医の受験資格の一部を満たすことができます。
救急医療体制は整備されており、研修医は指導医とともに二次・三次救急に積極的に参加します。 BLS や ACLS のコースも院内で定期的に開催されており、研修期間中に国際レベルの資格を得ることが可能です。
1 研修医基本理念
すべての研修医が確かな知識と医療技術を礎に成長を続け、患者に信頼され安心を与え、自信をもって医療を行うことができる医師に育つ。
2 研修目標と基本方針
“5つの基本方針が私たちの初期臨床研修を支える”
1) 基本的な手技・知識・問題解決能力を身に着ける
① 2次救急、病棟、外来での基本医療を習得する。
② 症例提示(presentation)能力を習得する。
2) Professionalな医師を目指す
① 患者の目線に立つ。患者の尊厳を大切にする。
② 疾患ではなく患者を治療する。
3) コミュニケーション能力を身に着ける
① 患者・患者家族とのコミュニケーション能力を身に着ける。
② 多職種とのコラボレーション能力を身に着ける。
4) 山梨の医療を考える
① 中核病院が地域医療機関と連携する形を学ぶ。
② 医療の社会的役割を理解する。
5) 学術的探求と臨床研究能力を習得する
① 症例報告と学会発表を習得する。
② 臨床研究を経験する。
山梨県立病院機構理事長
東京大学名誉教授
小俣 政男
重層屋根瓦方式 “Touch First but Protected”
Touch First
どのように患者さんが来るかわからない状況に投げ込まれ、医師として動じず冷静に診療するというトレーニングをまず行う必要がある。 ある年の8月の救急には、子どもの発熱、盲腸炎、過換気症候群、自殺企図、急性腹症、気管支炎、高血圧症、インフルエンザ、胃潰瘍、心筋梗塞、虫刺され、 腸閉塞、めまい、前立腺肥大など多岐に渡る患者さんが来る、まさに暑い夏です。この多様性を1年間経験し自ら対応できるように努める、と同時に、来るべき 1年生の “Senior” としての役割を果たす。 それこそ屋根瓦方式です。
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しかし、ただそのExposureに諸君を投げ出すわけではありません。そこで機能するのが、 “重層屋根瓦方式”です。臨床に身をおいて10~30年のベテラン、さらには救命救急センターの心肺停止から蘇生を行うチームまで、幾層にも多くの専門医 が後ろに控えています。初動の対応を、研修医が安全に行えるシステムがすでに当院にはあります。現在は、臨床研修 (1年、2年) 45名が研修に励んでいます。
後期研修に向け
自身、27歳 (45年前) で米国Matching Programに応募、渡米し6年間の米国体験を有する。その実体験から、これからの、卒後研修の真価が問われるのは実は「後期研修」ではないかと考えます。
若き医師の多様な願望に答える為、「後期研修」期間には特に、研修の幅に “Spectrum” を持たせる必要があります。 “First Touch”から、専門医の取得、更に当院で蓄積された臨床データのPublication或いは海外留学など、専門性のある後期トレーニングの質改善に 努め、毎年30名程度 (卒後3 – 5年) が研修に励んでいます。
人生は一度、しかも最初の五年
医師になってからの最初の数年間がその後の成長にいかに大切な時期であるかを、49年間臨床に携わった今でも実感しています。
意欲あふれる皆さんが当院の研修に参加されたあかつきには、全職員一致団結して将来の日本の医療を担う人材の育成に努めることをお約束いたします。
院長
小嶋 裕一郎
当院は「高度救命救急センター」、「総合周産期母子医療センター」を有し、 また、「都道府県がん診療連携拠点病院」、「がんゲノム医療拠点病院」に指定されています。救急医療、周産期医療、がん診療において中心的な役割を担っているほか、総合病院としての機能を有しています。また、防音に特に力を注いだレジデントクォーター(研修医 居住施設)も備え、アメニティーも充実しています。なにより、院内学術集会、MSGR(Medical Surgical Ground Round,抄読会)など、研修医、専攻医の学問的サポート体制、また手技に積極的に参加できる体制も充実しています。医学生の皆さん、専門研修を目指す研修医の皆さん、是非当院でのプログラムに参加し、研修医、専攻医としてのよきスタートを切ってください。
臨床研修プログラム責任者のコメント
教育研修センター統括部長
飯室 勇二
当院の特徴は、地域中核病院としての救急医療と各分野での最先端医療の提供、及びそれらを支える教育及び学術活動、の両立にあります。
【救急医療】
ドクターヘリとドクターカーを駆使し、山梨県全域をカバーする医療圏の3次救急と週2回の2次救急当番を行っています。1年 次・2年次・中堅医師・上級医が重層屋根瓦方式で初期対応を行っており、当院プログラムに参加していただければ基本的医療技術を安全・確実に習得できま す。
【教育・学術活動】
医師になってからの数年間が、その後の医師としての成長にいかに大切な時期であるかは、誰もが認めるところです。上級 医、中堅医師からの指導はもちろんですが、若き先輩医師たちによるマンツーマン指導により、きめ細かい教育を行っています。また、皆さんの今後の活躍の裏 づけとなる学術活動にも、臨床研修の時期から積極的に参加していただきます。
まずは、当院へ一度見学に来てください。若き医師たちが生き生きと躍動している姿を目の当たりにすることが出来ます。首都圏に隣接しつつ、自然あふれる山梨の地で、よき仲間と自分を高めていく、そんな研修に参加してみませんか。
古屋 莉花(令和5年度 二年次研修医)
救急疾患に対応する力を身につけたいという思いで当院を研修先に選びました。二次救急では研修医がファーストタッチをし、鑑別をあげ、検査・治療を考えていきます。はじめて二次救急に参加したときは、ひとりで全てをこなす先輩研修医の先生方の姿に衝撃を受けました。この恵まれた環境で経験を積み、先輩方のようになることが目標です。 スピード感溢れる環境で、充実した生活を送っています。まだまだ分からないことばかりですが、上級医の先生方の指導を受けながら、日々成長を実感しています。同じ目標を持った同期とは、支え合いながら楽しく過ごしています。そしてなにより、先輩研修医の先生方の存在が大きいです。目標となる先輩方の姿を見ながら勉強しています。当院に少しでも興味のある方はぜひ見学にいらしてください。一緒に働ける日を心待ちにしています。
中村 優一朗(令和5年度 二年次研修医)
私がこの病院を志望したのは、6年生の時の見学がきっかけです。二次救急では研修医の先生方が診察をし、その後の方針まで考えており主体的に動いていました。座学よりも実践で学びたい私にとって、自分もこのような環境で働きたいと思ったのを覚えています。まだ働き出して数か月ですが、採血はもちろんCVカテーテル挿入など多くの手技を行う機会があり、ドキドキしながらも毎日充実した日々を過ごしております。もちろん困ったことがあれば上級医の先生方やコメディカルの方などが優しく教えてくださり、安心して研修することができます。 出来ないことはまだたくさんありますが、日々出来ることが増えていることに喜びを感じ、2年後の自分を思い描きながら日常診療にあたっています。ぜひ当院に足を運び、ここでの研修を終えた2年後の自分を想像してみてください。来年皆さんと働ける日を楽しみにしています。
総合研修プログラム
【プログラムの基本的な考え方】
自由度が非常に高く、様々なニーズに対応できます。
【必修科目について】
内科研修では、内科詳細科(群)の5つ(「循環器・糖尿病内分泌」、「呼吸器」、「消化器」、「腎臓・リウマチ・膠原病」、「総合診療・感染症」)のうちから3つを選択し、それぞれを8週研修します。※一部の詳細科(群)に希望が集中した場合は、調整となります。
2020年度からの臨床研修制度見直しに伴い、「外科」、「小児科」、「産婦人科」、「精神科」を4週間ずつ研修します。「精神科」のみ精神科専門病院である県立北病院での研修となります。
[地域医療研修病院]
上野原市立病院、大月市立中央病院、峡南医療センター市川三郷病院、 峡南医療センター富士川病院、組合立飯富病院、都留市立病院、北杜市立甲陽病院、北杜市立塩川病院、山梨市立牧丘病院、山梨赤十字病院、道志村国民健康保険診療所
【選択診療科について】
104週(2年間)のうち、48週間を自由に選択できます。
(但し、4週ごとの研修を原則とします。)
産婦人科小児科重点プログラム
【プログラムの基本的な考え方】
【必修科目について】
【選択診療科について】
神経内科、保健・医療行政、リハビリテーション、予防医学、精神科は他施設で研修します。
選択科としての内科研修は、上記5つの詳細科群での研修(病棟ごとの研修)、各詳細科ごとの研修のどちらでも選べます。
【週間】 (例)消化器内科
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
午前 | 消化管カンファレンス | 肝胆膵カンファレンス | 全体カンファレンス | ||
上部消化管内視鏡検査 | 上部消化管内視鏡検査 | 肝生検、上部消化管内視鏡検査 | 上部下部消化管内視鏡検査、血管造影 | 上部下部消化管内視鏡検査 | |
午後 | 下部消化管内視鏡検査 | 下部消化管内視鏡検査 | ESD ERCP 胆道系処置 |
下部消化管内視鏡検査 | 下部消化管内視鏡検査 |
肝生検カンファレンス、Medical Surgical Ground Rounds | 総合キャンサーボード | ||||
※病棟診療に加えて、上記を実施 |
【夜間】 (救急)
回数 | 約3回 / 月 |
---|---|
研修体制 | 指導医のもと研修を行う |
研修時間 | 17時15分~翌8時30分 |
翌日勤務 | あり(ただし、二次救急の当番日に研修を行った場合は翌日休み) |
臨床研修においては、個々の研修医が個々の入院症例の担当医として診療することにウエイトが置かれますが、研修医が定期的に集合してミーティングを持つことも大切な要素です。
当院では、各診療科カンファレンスや臨床病理検討会(CPC)のほか、MSGR(Medical Surgical Ground Rounds)という独創的な学術集会や各種キャンサーボードが開かれ、様々な学びの場が用意されています。 さらには、以下の研修医のためのミーティングも行っています。
「ピンポイント・ミニレクチャー」
第1・第3木曜日の早朝 |
各診療科の若手医師が、持ち回りで、臨床研修に必要な一点を講義します。 |
○ 講義内容(例)
・・・ |
「救急経験症例検討会」
第2・第4・第5木曜日の早朝 |
救急科の指導のもと、救急当直にて経験した症例を振り返ります。 |
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「研修医発表会」
年に6回 |
院内全体の集会として実施しています。 |
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