回復の見込みがなく数日以内に死亡すると推定される人工呼吸器を装着した重症脳障害の患者さんであって、人工呼吸治療を中止すると24時間以内に死亡すると推定される場合に、患者さんのご家族が人工呼吸器の離脱を強く希望する場合の対応
集中治療領域における終末期の医療行為においてもその大多数は治療行為を継続することが基本である。しかし、時には延命治療の中止を選択せざるを得ない場合や、状況から中止が望ましい場合と思われる場合もある。その場合、中止するかどうかの検討は、「救急・集中治療領域における終末期医療に関するガイドライン~3学会からの提言~」(平成26年11月4日 作成)(日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本循環器学会)に準拠し、複数の医療従事者による複数回の検討の結果によるべきである。
さらにチームが判断に迷う場合は倫理委員会に事例の提示を行い、倫理委員会にて検討する。
1.生命機能回復不能の判定・確認
生命維持機能が絶対的に不全で回復が望めず、数日以内に死亡すると推定される場合に、人工呼吸器の中止を考慮する。
患者さんのご家族が予定の立つ状態で揃って看取ることを希望している状況と考えられることから、人工呼吸器を中止すると24時間以内に死亡すると推定される場合が検討の対象となる。
2.患者さん・ご家族の意向・意思の確認
患者さんが生前に延命治療を拒否する意思を明確にしている場合は、これを一義的に尊重し、これに従う。明確な意思表示は、事前指示(advance directive)や生前発行遺言(living will)にて示される。
患者さんによる書面での意思表示がなくても、患者さんがご家族に口頭で延命処置拒否の意思を伝えていたことが事実として確認されれば、治療方針を決めるうえでの重要な参考となる。
診療中などに患者さんの言葉で意思表示があった場合にその旨を主治医がカルテ記載したものは、後の患者さんの意思の推定の際の参考となる。この場合、ご家族の立会や確認の事実が付記されていれば、患者さんの意思表示としての重みは増す。
患者さん自身の延命治療拒否の意思表示が確認できている場合は、ご家族内に反対や異論が出た場合でも、患者さんの意思に従い、主治医は粘り強くご家族に説明・説得・相談を繰り返す。
患者さんの意思確認が不可能な場合は、ご家族に意見を求める。この場合の家族とは、親族のみならず、最も親しい友人なども含まれる。あらかじめご家族内でキーパーソンを決めてもらい、伝達を一本化し、ご家族で話し合った結論を、キーパーソンを通して主治医に伝えてもらう。
3.医療チームによる繰り返しの検討
チーム医療が基本の現在の医療では、「中止・離脱」に対する医療者の意見・決定も主治医単独や当該科の医師のみでは許されない。少なくとも、主治医を含めた当該科の医師団、当該病棟の看護師、当該病棟の薬剤師、必要に応じて他診療科の医師を集めたカンファレンスを、繰り返し(少なくとも2~3回)行うことが必要である。その結論の如何に拘わらず、そのプロセスは毎回詳細にカルテに記載して残す。なお、上記の医療チームの構成員の一部は、状況に応じて省略できる場合がある。
4.倫理委員会への諮問
医療チームによる繰り返しの検討を経ても、家族内の意思統一が得られない場合には、医療チームによる検討プロセスを別紙の様式に則り記載し、委員会へ提出し、その助言・承認を得る。
エホバの証人患者の輸血については、生命を守るという医療人としての基本的な立場を重視する。従って、輸血の可能性が否定できない場合は無輸血手術ないし無輸血治療を前提とした治療を行うことは出来ず、原則として患者さんの受け入れを行わないことが病院の方針である。
イ 輸血まで時間がある場合
予定手術など輸血まで時間がある場合は、当院では無輸血を全うして治療することができないことを話してご理解を得た後、適切な医療機関を紹介するか、または患者さんに医療機関を探していただき、当院として患者さんの受け入れは行わない。
ロ 緊急に輸血が必要な場合
患者さんが救急で来院し、転院を待たずすぐに輸血が必要な場合は、輸血が必要なことをご本人やご家族に話し理解を求める。仮に理解が得られない状態であっても、患者さんの生命維持に輸血が必要と主治医が判断した場合は、ご本人とご家族に輸血をすることを告げ、必要な輸血を行う。輸血が必要かどうかの判断は主治医に委ねる。
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山梨県立中央病院