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平成31年度・令和元年度 病院指標

平成31年度・令和元年度 病院指標

  1. 年齢階級別退院患者数
  2. 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  3. 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
  4. 成人市中肺炎の重症度別患者数等
  5. 脳梗塞の患者数等
  6. 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  7. その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)
 

医療法における病院等の広告規制について
↑ 【厚生労働省のページ】

1. 年齢階級別退院患者数

 当院の入院患者さんの合計は前年度(2018年度)から418人減少しました。60代以上の患者さんが全体の67%を占めており、中でも70代の患者さんの割合が28%で最も多く、次いで60代が18%、80代が17.5%となっています。一方で、当院は県内で唯一厚生労働省の定める総合周産期母子医療センターがあり、乳児の患者さんの割合が比較的高いのが特徴です。

 

2. 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)

 肺がん・呼吸器病センターでは、呼吸器外科と協力し、患者さんが安心して治療を受けられるように努めています。最も多いのは、手術不能肺がんの化学療法導入や術後補助化学療法導入に伴う入院で、薬剤の種類や合併症の有無で分類されますが、総数としては200件以上となっています。それに伴い、外来通院で化学療法を行う件数も免疫チェックポイント阻害薬を含めて増加しています。

 検査入院として気管支鏡検査を目的とした入院例が件数として多く、苦痛や不安の軽減のため適切な鎮静を行い安全に実施しており多施設からの紹介もあります。肺炎、間質性肺炎に対する急性期の治療や、特発性肺線維症に対する抗線維化薬の導入治療も積極的に行っている他、呼吸不全診療の充実や抗酸菌感染症診療にも取り組んでいます。

 高齢化に伴う誤嚥性肺炎を含めた呼吸器感染症の増加、当院の姿勢として休日夜間を問わない発熱患者に対する救急対応の受け入れに反映して肺炎入院件数が増加しており、適切な診断、治療を開始し地域の病院への転院へ連携しています。

  

 消化器内科で最も多いのは大腸ポリープの患者さんです。大腸ポリープは内視鏡を用いて切除しますが、ほとんどは外来で実施しております。また、当院は県内での大腸ポリープ切除数が最多ですが、そのほとんどはここに反映されない“外来日帰り手術”です。

 次に多いのは早期胃癌の患者さんです。全国一短い入院期間で内視鏡的切除をしています。3番目に多いのは閉塞性黄疸の患者さんです。癌の場合はステントという形状記憶合金性のメッシュや樹脂製のチューブを挿入し黄疸の軽減を図ります。胆石の場合は鉗子で把持して直接除去しています。4番目に多いのは胃十二指腸の患者さんです。吐下血で救急搬送されることが多く内視鏡的に止血処置をしています。5番目に多いのは食道癌の患者さんです。放射線化学療法を行っています。また、同数で大腸憩室出血の患者さんです。内視鏡を実施し出血部位が確認できれば止血処置を行っています。

 循環器内科では冠動脈疾患、不整脈、心不全など循環器疾患のすべてに対応しております。冠動脈インターベンション手術は年に約200例以上施行し、不整脈に対するアブレーション治療も昨年度は300例施行しており、本年度も同程度に達する見込みです。

 ペースメーカー挿入はもちろんのこと、治療施設に限りのある植込み型除細動器や両心室ペーシング植込み、リードレスペースメーカ植込み、皮下植込み型除細動器挿入も施行しております。

 糖尿病(1型糖尿病・2型糖尿病)、内分泌疾患(甲状腺疾患、副甲状腺疾患、視床下部・下垂体疾患、副腎疾患)、二次性高血圧を中心に診療を行っています。症例数の最も多い2型糖尿病では、教育入院に力を入れ、糖尿病専門医だけではなく、病棟看護師、管理栄養士、薬剤師、検査技師、理学療法士で構成されたチーム医療で生活習慣の改善指導を積極的に行っています。1型糖尿病患者のインスリンポンプ療法の導入も行っています、また、糖尿病の合併症の診断と治療は、眼科、腎臓内科、循環器内科、泌尿器科、産科などとの緊密な連携のもと行っています。

 腎臓病の原因は多岐にわたり、治療法も異なる為、血液検査、尿検査、超音波検査、腎生検などにより原因を診断したのち、適切な治療を提供しています。

 発症初期から透析期まで、腎臓病の全病期を一貫して担当している当科の特徴を活かし、長期的な展望に立った診療を行っています。

 血液内科では、薬物療法を中心に、急性白血病は入院で、悪性リンパ腫や多発性骨髄腫は外来治療を中心に行い、入院はできるだけ短期間とし、患者さんがQOLを保ちながら日常生活に早く復帰できるよう努めています。薬物療法で治療が困難な場合は、造血幹細胞移植に切り替え治癒を目指します。造血幹細胞移植については、血縁、非血縁、臍帯血、自家移植等から最適な移植法を選択し、最適なタイミングでの移植を行います。当院で診断から薬物療法・移植、退院後の体調管理まで一貫して行うことで、患者さんの健康を責任持って管理いたします。

 膠原病とは、自らの身を守る免疫機能が誤って自己を攻撃してしまう病気であり、長期にわたって免疫を抑える治療が必要になります。発症時、治療経過中の病状悪化時、感染症などの合併症が出現したときなどに入院の必要性が生じます。特に発症時には、身体症状に加えて血液、画像、病理学的検査などを組み合わせて病気を診断確定し、その病状に合わせてステロイドや免疫抑制剤を組み合わせた治療を行いますので入院期間が長くなります。今年度は平均在院期間がやや短くなっていますが、今後とも必要な在院期間は十分保ちつつ、可能な限り早く退院できるように一層努力していきたいと思います。なお、関節リウマチ患者さんは外来で加療することが多く、内科的に入院の必要がある例はとても少ないです。

 2019年度はスタッフ数の減少により入院患者数全体が2018年度より半減しました。急性腎盂腎炎については、初期は点滴で治療し内服抗菌薬に感受性があるとわかり、かつ退院可能な体調であれば、内服に切り替えて退院し外来で様子を見ていきます。実際には若い人だけではなく、施設入所者や体が十分動けない介護が必要な方もおり、その場合には治療が終わってもなお退院調整に時間がかかることがあります。

 腎盂腎炎以外にも様々な感染症、非感染症疾患の診療を行っています。

 小児科では、地域の小児科開業医や県内全域の関連病院と連携して二次小児医療を展開しており、当院の総合周産期母子医療センターと連携する中で脳性麻痺や先天奇形などのさまざまな基礎疾患を有するお子さんたちも支援しています。インフルエンザやRSウイルスなどのウイルス感染に起因する呼吸器系疾患や緊急搬送を要する熱性けいれん、専門外来ではてんかんなどの脳・神経系疾患や低身長や糖尿病などの内分泌/代謝性疾患の病児が多くなっています。

 外科では、地域医療支援の観点から患者さんに安心していただける緊急手術にも対応しています。治療対象となる疾患は、消化器や乳腺の悪性腫瘍が多いです。全国平均と比較して当院の平均在院日数は短縮されています。今後とも治療が滞りなく行えるように努めてまいります。

 呼吸器外科では、肺がんや気胸などの疾患に対して、外科的治療(主に手術)を施行しております。「肺の悪性腫瘍 手術あり」とは肺がんに対して手術を行った患者さんであり、県内最多の症例数です。平均在院日数も全国平均より大幅に短縮しています。気胸に対する手術症例も県内最多です。

 現在、当科は、国内有数の呼吸器外科high volume center(多数例を手術する施設)であり、術後治療成績(肺がん術後無再発率、気胸術後無再発率など)、手術合併症率、術後在院日数とも国内トップレベルの成績です。

 心臓血管外科では虚血性心疾患(狭心症など)、弁膜症、大動脈瘤の手術をほぼ均等に幅広く行っています。大血管疾患ではステントグラフト内挿術をはじめ、急性大動脈解離の緊急手術まで常時対応可能な体制を整えています。より低侵襲化をこころがけ特に高齢者緊急手術などの在院日数の短縮に取り組んでいきたいと考えています。

 整形外科は四肢の骨折や変形性関節症、変形性脊椎症の手術を主に行っています。高齢者の大腿骨近位部骨折は、合併症併発のリスクが高く寝たきりの原因となるため、準緊急手術として対応し速やかにリハビリが行えるようにしています。そのため、在院日数は全国平均より2日以上短くなっています。救命救急センターへ搬送される多発外傷患者・重度四肢外傷患者に対応するため、初療の段階から整形外科医がかかわり、適切なタイミングで治療を行っています。変形性関節症や変形性脊椎症に関しても合併症を伴った症例が多く、他科と連携を密にとりながら安全な手術を心がけています。

 脳神経外科では脳卒中、頭蓋内腫瘍、頭部外傷、小児脳神経外科その他脳神経外科疾患を幅広く診療しています。脳卒中急性期症例が最も多く、手術の有無にかかわらずすべて脳神経外科で対応しています。年間約300例の脳卒中入院治療を行っています。特にくも膜下出血、破裂脳動脈瘤の急性期治療、脳梗塞に対する急性期血栓回収術など専門的技術が必要な診療を積極的に行っています。

 小児外科は生まれたばかりの赤ちゃんから中学生までのこどもを対象に、肝臓・腎臓・腸などのお腹の臓器、肺・食道などの胸の臓器、首や皮膚の下の腫瘤(しこりやできもの)など多岐にわたる疾患を扱う診療科です。臓器ごとの専門的な知識や技術が必要な疾患の場合は他の診療科の医師と連携をとりながら診断・治療に当たります。

 皮膚科では帯状疱疹、水痘、単純ヘルペス、蜂窩織炎、丹毒などの感染症や皮膚悪性・良性腫瘍、難治性皮膚潰瘍、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、水疱症など皮膚疾患全般につき積極的に治療しています。

 皮膚科で最も多い入院症例は蜂窩織炎、丹毒などの細菌感染による皮膚の炎症性疾患です。抗菌薬の点滴注射による治療を行っています。また緊急を要する壊死性筋膜炎などでは抗菌薬の点滴注射治療に併せて、迅速に皮膚切開術やデブドマンなどの外科的手術を行っています。次いで多い入院症例は帯状疱疹でウイルス感染による皮膚の炎症性疾患です。強い痛みを伴うことが多く、顔面に発症した症例では顔面神経麻痺や難聴、視力障害など合併することがあります。抗ウイルス薬の点滴注射や消炎鎮痛剤の内服で治療を行っています。また合併症が疑われる症例については耳鼻科、眼科と連携し治療を行っています。また重症な脱毛症症例にはステロイドの点滴治療を行っています。全身に水膨れができる天疱瘡、水疱性類天疱瘡などの水疱症症例には火傷に準じた軟膏処置を行い、ステロイド内服治療を行っています。ステロイド抵抗性の症例に関しては大量ガンマグロブリン静注療法を行っています。

 当院では膀胱がんに対する経尿道的手術については、手術前日入院、術後2日目退院とし、全国と比べると在院日数は短くなっています。対外衝撃波による尿路結石破砕術(ESWL)、前立腺の生検は1泊2日でおこなっています。膀胱・尿管がんに対する抗がん剤治療は初めの数日のみを入院(3泊4日)で行い、それ以降は通院加療がんセンターで行っています。

 2019年の形成外科の手術件数(レーザー照射も含め)は752例で、入院手術件数が256例、外来手術件数が496例でした。最多は皮膚皮下良性腫瘍(母斑・粉瘤・血管腫・脂肪腫など)275例で、次に眼瞼下垂症 64例(先天性6例、後天性58例)でした。そのほかにも皮膚悪性腫瘍 46例、四肢外傷 40例、耳・瞼その他の先天異常 39例、瘢痕拘縮・ケロイド 39例、顔面骨骨折 38例(鼻骨 24例・ 頬骨8例・ 眼窩底 4例)、乳房再建 30例(人工乳房29例、自家組織1例)、顔面軟部組織損傷 29例、難治性潰瘍 22例、熱傷(植皮術)26例、口唇口蓋裂 14例、四肢先天異常(多指・合指)8例、眼瞼内反症6例・睫毛内反『さかさまつげ』 11例、陥入爪19例と形成外科の疾患をほぼ全般にわたり行っています。

 また、あざ専用のQスイッチ・ルビー レーザー照射の症例数は次のとおりです。【保険診療】扁平母斑・太田母斑・外傷性刺青・異所性蒙古斑: 23例、【自由診療】老人性色素斑(しみ)・刺青(入れ墨): 36例

 当院では子宮、卵巣の良性、悪性腫瘍ともに積極的に低侵襲手術を取り入れています。また、術後の回復や痛みのコントロールなども工夫して早期離床を図っています。そのため平均在院日数は全国と比較しても短く、「早く、きれいに治す医療」が可能になっています。

 地域医療の基幹病院としてあらゆる眼疾患の診断・治療に対応しています。対象疾患は白内障、緑内障、網膜硝子体疾患(網膜剥離、糖尿病網膜症、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症、網膜前膜、黄斑円孔など)、角膜疾患、ぶどう膜炎、視神経炎、斜視、弱視などです。眼科の入院のほとんどが手術目的となり、その中でもっとも多い症例は白内障で眼科手術の約85%を占めます。白内障以外で多いのが上記疾患であり、網膜剥離は失明の危険性がある重篤な疾患であり、治療に力を入れています。

 耳鼻咽喉科では耳、鼻、咽頭、喉頭、頸部など耳鼻咽喉科領域すべての疾患に対応し診療しています。頭頸部外科として、炎症性疾患は元より良性腫瘍、悪性腫瘍の系統的治療(化学療法、放射線治療、手術の三者の併用)や副鼻腔炎の鼻内手術を積極的に行っています。また突発性難聴、末梢性顔面神経麻痺などに対する薬物療法の治療実績も豊富です。

 救急科は、県内唯一である高度救命救急センターを中心に診療を行っています。当科が担当させていただくのは、重症外傷や熱傷、急性心筋梗塞、脳卒中、心肺停止、薬物中毒などの重篤な方または緊急性の高い方、複数の診療科にわたる重症な方などです。

 また、当科はドクターカーやドクターヘリの運用を担っており、病院外へ医師が出向くことによって救命率の向上を目指しております。当科には年間約2,300人前後の方が救急搬送され、その内約1,500人前後の方が入院いたします。疾患別で搬送が多いのは重症外傷や心肺停止、薬物中毒などです。

 

3. 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数

 

 当院のがんに対する治療の目標は、内視鏡治療、外科手術、化学療法、放射線療法といった従来の治療の上にさらにゲノム解析センターと協力してそれぞれの患者さまにより精緻な治療方針を分析、選択施行していくことです。

 2018年4月から消化器外科分野、呼吸器外科分野でロボット支援下手術の保険診療が可能となり、消化器外科分野では、すでに日常診療となった胃癌、食道癌に対するロボット手術のほか、本年度より直腸癌にもロボット支援下手術が徐々に導入されつつあります。

胃癌・大腸癌:早期がんを中心とした内視鏡治療や腹腔鏡下手術といった低侵襲手術 から、進行がんに対する化学療法を併用した手術までを施行しています。消化器がんの治療では、消化器内科、消化器外科、放射線科、病理科、緩和ケアの各専門医、医療スタッフが互いに連携してチーム医療を行っています。

乳癌:乳癌症例は年々増加してきており、本県では最も多くの患者さまの治療を行ってきました。乳癌に対する外科手術、化学療法、放射線療法のほか、ゲノム診療にも対応し総合的な治療を行っています。治療成績も良好です。

肺癌:転移を認めるステージⅣの症例が多い状況ですが、外科手術をはじめ化学療法、放射線療法といった治療を呼吸器内科医、呼吸器外科医、放射線科医が積極的に行っています。

肝癌:肝胆膵領域においては、内科、外科の各専門医の連携のもと集学的治療を導入し、進行癌症例や再発症例に対しても根治的治療を目指しています。

 

4. 成人市中肺炎の重症度別患者数等

 重症度は軽症・中等症・重症・超重症に分けられており、当院で治療を行う患者さん中等症の割合が58.1%で最も大きく、次いで、重症が25.3%です。

 肺炎の患者さんは高齢者が多く、年齢が高くなるほど重症度も高くなる傾向にあり、重症・超重症患者さんの平均年齢は80歳以上となっています(高齢者は重症化予防のために肺炎球菌ワクチンの予防接種が推奨されています)。

5. 脳梗塞の患者数等

 当院は高度救命救急センターを備えており、24時間体制で脳梗塞の急性期医療に対応しています。

 よって、発症から3日以内に入院となる症例が93.8%を占めており、平均入院期間は16日程度です。また、約半数の患者さんが、発症から早期に当院での急性期治療を行った後、リハビリ病院等へ転院しています。

6. 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)

 1番目、5番目に多い手術は大腸ポリープ、腫瘍に対する内視鏡的切除です。4-5cm程度の大きな腫瘍も切除しています。2番目に多い手術は早期胃癌に対する内視鏡的切除です。全国一短い入院期間で実施しています。3番目に多い手術は主に潰瘍からの出血に対するクリップや高周波電流を使用した内視鏡的止血術です。4番目に多い手術は癌や胆石による胆管閉塞に対して内視鏡下でステントと呼ばれる形状記憶合金性のメッシュや樹脂製の筒を挿入し胆汁の流れを改善する手術です。

 冠動脈疾患、不整脈、心不全など循環器全般を高度に、万遍なく網羅しているのが当科の特徴です。

 緊急/待機的な冠動脈治療はもちろんのことペースメーカー治療も多くおこなっております。心房中隔穿刺を伴ったカテーテル心筋焼灼は主に心房細動の予防・治療に施行するもので、年々増加しております。

 内シャント設置術は、新規透析導入例のみでなく、血管閉塞例、他院で作成困難例や人工血管移植術についても積極的に行っています。経皮的シャント拡張術・血栓除去術の大多数は、通院で治療を行っており、2019年度は63件施行しています。

 当院は県内唯一の総合周産期母子医療センターを併設しています。院内で出生した新生児はもちろん、他院・他施設で出生した新生児の救命のために往診搬送も行っており、24時間体制で重症新生児に対して必要な診療が行える体制を敷いています。

 当院外科での治療は、さまざまな対象臓器に対する手術や多様な治療を実施しています。特に乳腺疾患においては乳房形成術や再建術を取り入れ整容性に優れた手術を心がけています。一般外科、消化器疾患においてはさらに低侵襲な鏡視下手術の導入を積極的に進めています。また入院後すぐに治療に移れるように術前日数の短縮をめざして外科外来、病棟、患者支援センターと共に努めてまいります。

 呼吸器外科では、主に肺がんや気胸の手術を行っています。肺がん症例では、標準手術とされる肺葉切除術を中心に、早期がんに対する縮小手術、進行がんに対する拡大手術などあらゆる手術を施行しています。気胸の手術においても当科独自の改良を加え、再発率は1%以下です(全国平均5-10%)。手術は胸腔鏡下手術またはロボット支援手術が中心であり、独自の麻酔法の導入により術後疼痛は劇的に改善しました。

 心臓血管外科では弁膜症、冠動脈バイパス手術、大動脈瘤手術をほぼ均等に幅広く行っています。大動脈瘤手術は開胸、開腹法とステントグラフト法を症例によって選択して行っていますが、より低侵襲なステントグラフト治療が増加、成績も安定しています。冠動脈バイパス手術は人工心肺を用いた心拍動下手術を基本術式にしています。僧帽弁逆流症は弁形成を第一選択としています。また大動脈解離症など緊急手術は常時受け入れ可能な体制を整えています。

 高齢者の大腿骨近位部骨折・手関節骨折に対する手術が最も多くなっています。高齢者の大腿骨近位部骨折や救命救急センターへ搬送される多発外傷患者では、可及的早期に手術を行うことが大切とされています。麻酔科および手術スタッフの協力により、適切な時期に手術を行うことができています。それにより、予後の改善・スムーズなリハビリ病院への転院が可能となっています。

 脳神経外科では慢性硬膜下血腫穿頭術が最も多い手術になります。次いで脳動脈瘤手術で開頭術を中心に行っております。脳動脈瘤手術総数は約40例です。脳腫瘍手術も積極的に行っており、ここ数年は年間10~20例の手術を行っています。

 小児外科の手術は全国的に鼠径ヘルニアが最も多いです。鼠径ヘルニア手術は腹腔鏡での手術と、昔ながらの鼠径部(足のつけね)を切開して行う手術があり、当院ではどちらも行っています。他には停留精巣の手術、臍ヘルニア(でべそ)、虫垂炎の手術が多くなっています。特に、急性虫垂炎の治療には2つの治療方針をとっております。中等度以上の虫垂炎では準緊急的に手術治療を行うことで、最も確実に早期の回復を目指します。一方、軽症の虫垂炎や逆に進行して重症化した場合には抗生剤を用いながら保存的治療を行っています。重症の虫垂炎では炎症が強く手術が難航し術後の合併症も多くなるため、保存的治療で一旦軽快させておき腹部の炎症が消滞する約3ヶ月後を目標に待機的に虫垂切除を行うことを勧めています。

 いずれの手術でも、お子さんの長い将来のことを考えながら治療戦略をたてて診断・治療に携わっています。

 当科では、膀胱がん、腎臓がん、前立腺がんの手術を非常に多く行っており、在院日数も全国平均と比べ、大変短くなっています。前立腺がんの手術はほぼ全例で手術支援ロボットを使用しています。また、腎臓がんの手術もほとんどが腹腔鏡、もしくは手術支援ロボットを使用しています。このことにより術後早期に退院可能であり、在院日数は短くなっています。

 眼瞼下垂症手術や、眼瞼内反症手術については、抗血栓薬などを服用している患者や、合併症のある患者については1泊入院で、それ以外の患者については外来通院で行っています。

 皮膚皮下良性腫瘍(母斑・粉瘤・血管腫・脂肪腫など)については、ほとんどが外来手術で行っていますが、大きな腫瘍で摘出術に全身麻酔が必要な症例や、切除後に植皮術や皮弁術で再建を必要とする症例の場合には、入院手術で行っています。

 ゲル充填人工乳房を用いた乳房再建術については、6~10日の入院期間になっています。

 当院では低侵襲手術が主流となっています。低侵襲手術は腹腔鏡とロボットがありますが、ともに行うことができる近県でも数少ない施設です。

 2019年の手術件数は1,077件で、年間手術件数が初めて1,000件を超えました。その中で最も多い症例は白内障で眼科手術の約85%を占めます。次いで多いのが、糖尿病網膜症、網膜剥離、黄斑円孔、黄斑上膜などの網膜硝子体疾患対して行う硝子体茎顕微鏡下離断術です。斜視は小児の全身麻酔症例が多いため、前日からの入院になることが多く、術前在院日数が長くなっています。

 炎症を繰りかえす習慣性扁桃炎、IgA腎症などの病巣扁桃、睡眠時無呼吸症候群の原因となっている扁桃肥大に対しての口蓋扁桃摘出術を多く施行しています。また耳下腺や顎下腺などの大唾液腺にできる良性および悪性腫瘍の手術、甲状腺癌の手術を多く行っています。

 救急科は、重症外傷に対する開胸、開腹手術やカテーテルを用いた血管塞栓術を行っております。重症外傷に対する救命のための手術を行えるのは当科の最大の特色と言えます。また、重篤な呼吸・循環不全の方には経皮的心肺補助法を積極的に導入しており、救命率の向上につなげております。救命された後の呼吸補助のために気管切開術を施行して、長期生存およびADL(日常生活動作)の向上を目指しております。

7. その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)

“敗血症”

 当院は重症症例が多く、なかには敗血症を発症する症例もあります。必要に応じて治療薬の投与や血液浄化療法等の治療を行います。

“手術・処置等の合併症”

入院契機病名(入院のきっかけとなった病名)と「同一」の発生率が高く見えますが、入院中に手術・処置の合併症が発生することは少数です。術後の創部感染等の他に、透析患者さんのシャントトラブル(透析を行うために必要なシャントが血栓などで閉塞し使用できなくなる)治療(経皮的シャント拡張術・血栓除去術等)を目的とした再入院等も、この指標に含まれています。

掲載内容に関するお問い合わせ

地方独立行政法人山梨県立中央病院

医事課

電話番号
055-253-7111(代)

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