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令和5年度 病院指標・医療の質指標

令和5年度 病院指標

  1. 年齢階級別退院患者数
  2. 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  3. 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
  4. 成人市中肺炎の重症度別患者数等
  5. 脳梗塞の患者数等
  6. 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  7. その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)

令和5年度 医療の質指標

  1. リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率
  2. 血液培養2セット実施率
  3. 広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率

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↑ 【厚生労働省のページ】

1. 年齢階級別退院患者数

 当院の一般病棟を退院した患者さんの合計は、前年度(2022年度)から317人増加しました。0、10、20、50、70、80代で増加しており、特に0代の患者さんの増加率が13.08%で最大でした。

 当院の患者さんは60代以上が全体の約7割程度を占めており、中でも70代の患者さんの割合が28%で最も多く、次いで80代が20%、60代が15%となっています。

 一方で、当院は県内で唯一厚生労働省の定める総合周産期母子医療センターがあり、乳児の患者さんの割合が比較的高いのが特徴です。

(※ なお、本指標には新型コロナウイルス感染症治療及び正常分娩の患者さんは含まれておりません。)

2. 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)

 呼吸器内科では、呼吸器外科、放射線科と協力し、患者さんが安心して治療を受けられるように努めています。最も多かったのは間質性肺炎に対する急性期の治療や、特発性肺線維症に対する抗線維化薬の導入治療でした。クライオバイオプシーの導入もされ、紹介患者も増えています。例年総数として多いのは、手術不能肺がんの化学療法導入や術後補助化学療法導入に伴う入院で、薬剤の種類や合併症の有無で分類されますが、総数としては300件以上となっています。骨転移や脳転移に対する放射線治療の際にも通院で治療が困難な場合、当科で入院主治医となり治療を行っています。外来通院で化学療法を行う件数も免疫チェックポイント阻害薬を含めて増加しています。検査入院として気管支鏡検査を目的とした入院例が多く、苦痛や不安の軽減のため適切な鎮静を行い安全に実施しており多施設からの紹介もあります。肺炎、閉塞性肺疾患による呼吸不全にも呼吸器リハビリテーションを取り入れ対応しています。

高齢化に伴う誤嚥性肺炎を主とする呼吸器感染症の増加、当院の姿勢として休日夜間を問わない発熱患者に対する救急対応の受け入れに反映して肺炎入院件数が増加しており、適切な診断、治療を開始し地域の病院への転院へ連携しています。また当科においては新型コロナウィルス感染症の中等症~重症の受け入れも救命救急科とともに積極的に行い適切な薬剤による重症化させない治療を念頭に診療にあたっています。

※コロナウィルス感染症による入院は包括評価ではないため、集計に含まれません。

 消化器内科で最も多いのは急性胆管炎の患者さんです。胆管結石をはじめとした良性疾患や胆膵癌により胆管が閉塞することで、胆汁がうっ滞し、感染や肝不全から致死的になります。このため、早急に内視鏡治療を行い、閉塞部にステントといわれるプラスチックのチューブを留置し、感染胆汁の排泄を排泄させ治療します。また、癌の場合には金属ステントという形状記憶合金性のメッシュや樹脂製のチューブを挿入し黄疸の改善を図ります。

 2番目に多いのは早期胃癌の患者さんです。内視鏡診断の進歩により、早期胃癌の発見機会が増えている一方で、胃癌の原因となるピロリ菌の除菌も普及していることから今後は胃がん自体が減少していく事が予想されます。早期胃癌に対し、内視鏡に装着した2mmのメスを用いて病変を切除しています。国内で最も短い入院期間で、低侵襲の内視鏡的切除を行っています。

 3番目に多いのは大腸ポリープの患者さんです。大腸内視鏡を用いて、今後大腸癌へと移行しうる大腸ポリープを切除しています。5番目に多いのは膵臓癌の患者様です。膵臓癌は近年増加の一途をたどっています。最近では、膵臓癌の病理学的な確定診断のために、先端に超音波の搭載された内視鏡を用いて、胃や十二指腸から膵癌の生検を行う処置を行っています。最近では、癌自体の治療にもつながり得る癌パネル検査に提出する検体としても用いております。当院では1泊2日の入院で行っています。

 循環器内科では冠動脈疾患、不整脈、心不全など循環器疾患のすべてに対応しております。冠動脈インターベンション手術は年に約200例施行し、不整脈に対するアブレーション治療も近年、コンスタントに300例程度施行しております。

 ペースメーカ挿入はもちろんのこと、治療施設に限りのある植込み型除細動器や両心室ペーシング、リードレスペースメーカ、皮下植込み型除細動器などの挿入も施行しております。

 今後も施設認定などを経て、多くの手技を可能にしていく予定です。

 糖尿病(1型糖尿病・2型糖尿病)、内分泌疾患(甲状腺疾患、副甲状腺疾患、視床下部・下垂体疾患、副腎疾患)、二次性高血圧を中心に診療を行っています。症例数の最も多い2型糖尿病では、教育入院に力を入れています。糖尿病教育入院は主に1週間入院のクリニカルパスを使用しています。糖尿病専門医だけではなく、看護師、管理栄養士、薬剤師、検査技師、理学療法士で構成されたチーム医療で生活習慣の改善指導を積極的に行っています。そのほか、糖尿病患者の高齢化に伴い、感染症などの合併症治療や、血糖高値で手術ができない場合にインスリンで術前コントロールを行うことも増えています。1型糖尿病患者にインスリンポンプ療法の導入もしています。また、糖尿病の合併症の診断と治療は、眼科、腎臓内科、循環器内科などとの緊密な連携のもと行っています。

 腎臓病の原因は多岐にわたり、治療法も異なる為、血液検査、尿検査、超音波検査、腎生検などにより原因を診断したのち、適切な治療を提供しています。

 発症初期から透析期まで、腎臓病の全病期を一貫して担当している当科の特徴を活かし、長期的な展望に立った診療を行っています。

 膠原病とは、自らの身を守る免疫機能が誤って自己を攻撃してしまう病気であり、長期にわたって免疫を抑える治療が必要になります。発症時、治療経過中の病状悪化時、感染症などの合併症が出現したときなどに入院の必要性が生じます。特に発症時には、身体症状に加えて血液、画像、病理学的検査などを組み合わせて病気を診断確定し、その病状に合わせてステロイドや免疫抑制剤を組み合わせた治療を行いますので入院期間が長くなります。また、感染症による入院では抗生物質の十分な投与期間を必要とするため、入院期間の短縮が難しいこともあります。

 本年度は全国平均よりやや短い入院期間との結果となっています。病状によりどうしても長期の入院加療が必要となる患者さんもおられますので、今後とも必要な在院期間は十分保ちつつ、しかし可能な限り早く退院できるように一層努力していきたいと思います。なお、関節リウマチ患者さんは外来で加療することが多く、内科的に入院の必要がある例はとても少ないです。

 当科の入院患者さんの主たる病気はさまざまです。急性腎盂腎炎を含む尿路感染症が最も多かったですが、この病気は抗菌薬で治療可能です。今年は施設入所者が施設に戻れなかったり、転院調整に時間がかかり平均在院日数が伸びています。平均抗菌薬投与期間は7-10日です。

 当院小児科は、県内全地域の小児科開業医および小児地域支援病院と連携し、小児地域医療センター(二次)としての役割を担っています。また、当院は県内唯一の総合周産期母子医療センターを擁するため、脳性麻痺や先天性疾患など様々な基礎疾患を有する患者様の支援も行っています。2023年度の診断群分類患者数は、新型コロナウイルスパンデミック以前と同様の分布に戻り、入院患者数も増加しました(1位の気管支炎等は約2.3倍)。専門性の高い医療としては、てんかんや筋ジストロフィーなどの神経・筋疾患、先天代謝異常症や糖尿病などの内分泌・代謝性疾患の患者様の入院が多くなっています。

 消化器外科では、悪性疾患に加え鼠径ヘルニア・胆石症などの良性疾患の一般外科手術も行っています。また地域医療の観点から患者さんに安心していただける緊急手術にも対応しています。当院での消化器の悪性腫瘍の患者さんの平均在院日数は、全国平均と比して遜色ない結果です。今後も治療が滞りなく行えるように努めてまいります。

 乳腺悪性腫瘍手術件数は前年度よりも増加しておりますが、手術までの待機期間が伸びないよう、院内関係部署と連携しております。前年度同様、平均在院日数も全国平均と比較して短縮されており、今後も県内の乳がん患者さんの治療を遅滞なく進められるよう、努めてまいります。

 呼吸器外科では、肺がんや気胸などの疾患に対して、外科的治療(主に手術)を施行しております。「肺の悪性腫瘍 手術あり」とは肺がんに対して手術を行った患者さんであり、県内最多の症例数です。平均在院日数も全国平均より大幅に短縮しています。気胸に対する手術症例も県内最多です。現在、当科は、国内有数の呼吸器外科high volume center(多数例を手術する施設)であり、術後治療成績(肺がん術後無再発率、気胸術後無再発率など)、手術合併症率、術後在院日数とも国内トップレベルの成績です。

 心臓血管外科では虚血性心疾患(狭心症など)、弁膜症、大動脈瘤の手術などを幅広く行っています。大血管疾患は増加傾向にあり、特にステントグラフト内挿術は症例数が増えて成績も安定し、入院期間も短縮しています。緊急手術は常時対応可能な体制を整えています。より低侵襲化をこころがけ特に高齢者手術などのさらに在院日数の短縮に取り組んでいきたいと考えています。

 整形外科は四肢の骨折や変形性関節症、変形性脊椎症の手術を主に行っています。高度救命救急センターへ搬送される多発外傷患者・重度四肢外傷患者に対応するため、初療の段階から整形外科医がかかわり、適切なタイミングで治療を行っています。その結果、術前待機日数が短くなり、平均在院日数も短くなっています。変形性関節症や変形性脊椎症に関しても合併症を伴った難治症例が多く、他科と連携を密にとりながら安全な手術を心がけています。

 脳神経外科では脳卒中、頭蓋内腫瘍、頭部外傷、小児脳神経外科その他脳神経外科疾患を幅広く診療しています。脳卒中急性期症例が最も多く、手術の有無にかかわらずすべて脳神経外科で対応しています。年間約300例の脳卒中入院治療を行っています。特にくも膜下出血、破裂脳動脈瘤の急性期治療、脳梗塞に対する急性期血栓回収術など専門的技術が必要な診療を積極的に行っています。

 小児外科は生まれたばかりの赤ちゃんから中学生までのこどもを対象に、肝臓・腎臓・腸などのお腹の臓器、肺・食道などの胸の臓器、首や皮膚の下の腫瘤(しこりやできもの)など多岐にわたる疾患を扱う診療科です。臓器ごとの専門的な知識や技術が必要な疾患の場合は他の診療科の医師と連携をとりながら診断・治療に当たります。また、治療は患児の成長を妨げないように計画を立てながら安心して治療を受けていただけますよう心がけていきます。

 皮膚科では帯状疱疹、水痘、単純ヘルペス、蜂窩織炎、丹毒、などの感染症や皮膚悪性・良性腫瘍、難治性皮膚潰瘍、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、水疱症、脱毛症など皮膚疾患全般につき積極的に治療しています。皮膚科で最も多い入院症例は帯状疱疹でウイルス感染による皮膚の炎症性疾患です。強い痛みを伴うことが多く、顔面に発症した症例では顔面神経麻痺や難聴、視力障害など合併することがあります。抗ウイルス薬の点滴注射や消炎鎮痛剤の内服で治療を行っています。また合併症が疑われる症例については耳鼻科、眼科と連携し治療を行っています。

 次に多い入院症例は蜂窩織炎、丹毒などの細菌感染による皮膚の炎症性疾患です。抗菌薬の点滴注射による治療を行っています。また緊急を要する糖尿病性壊疽や壊死性筋膜炎などでは抗菌薬の点滴注射治療に併せて、迅速に皮膚切開術やデブドマンなどの外科的手術を行っています。全身に紅斑を生じる薬疹、中毒疹ではステロイドの点滴治療を行い、重症例ではステロイドのパルス治療を行います。全身に水疱を生じる天疱瘡や類天疱瘡等の水疱症ではステロイド内服治療、大量ガンマグロブリン静注療法、リツキシマブの点滴治療を行っています。外来での手術が困難な腫瘍性病変については入院し、中央手術室での切除術を行っています。

 泌尿器科では尿路の悪性腫瘍や結石など積極的に治療しています。いずれも全国平均よりも短い在院日数です。膀胱がんを尿道から内視鏡を入れて削る手術は3泊4日で行っておりますが、状況により1日短縮できるよう調整します。結石を体外から砕く手術(ESWL)は1泊2日で行っておりますが、2回目以降はおおむね日帰りで行っております。腎盂・尿管がん(尿路上皮癌)の抗がん剤治療は、点滴が長時間かかる部分のみ入院(3泊4日)で行い、それ以外は通院加療がんセンターで行っています。

形成外科では外来手術(眼瞼手術など)・他科入院患者の手術(乳房再建など)・労災(四肢外傷再建など)・自賠責(顔面外傷など)など様々な疾患・術式を提供していますので、上記診断群分類別患者数表に反映されていないものが多々あります。

昨年度は入院手術件数:388例、外来手術件数:608例でその内訳は熱傷7件(植皮5件)、顔面骨骨折38件(鼻骨18件・頬骨13件・眼窩5件・顔面多発骨折0件・陳旧性骨折0件)、顔面軟部組織損傷18件、先天異常62件(口唇口蓋裂17件・四肢5件・耳介14件・眼瞼22件・そのほか体幹、顔面12件)、四肢の外傷94件(上肢66件・下肢28件)、皮膚皮下良性腫瘍(母斑・粉瘤・血管腫など)287件、乳房再建18件、皮膚・軟部悪性腫瘍71件、瘢痕拘縮・ケロイド33件、難治性潰瘍27件(褥瘡2件)、眼瞼内反20件、睫毛内反18件、眼瞼下垂54件でした。

当院は県内唯一の高度救命救急センターを擁するため重症外傷症例が多い一方で、良性腫瘍・瞼手術も多く地域に根差した医療を提供しています。一昨年度より“こどもの形成外来”“キズ・キズアト外来”を立ち上げました。小児の先天性形態異常に対する手術例は徐々に増加しています。

 産科は、自費入院から保険入院に切り替わるケースや、保険入院中であっても一部に自費診療を伴うケースが多くあります。本集計では医科または歯科の包括請求のみ対象とするため、入院患者さんの多くが集計から除外されています。

 当院の婦人科では、良性腫瘍から悪性腫瘍まで、県内でもトップクラスの症例数を誇り、豊富な経験と高度な専門性を活かした治療を提供しています。その一例として良性腫瘍、悪性腫瘍ともに、患者様の体への負担を最小限に抑える低侵襲手術を積極的に導入しています。これらの手術は、従来の開腹手術に比べて傷口が小さく、痛みが少なく、回復も早いのが特徴です。

 さらに、当院では早期離床(手術後なるべく早く体を動かすこと)を推奨し、合併症のリスクを減らし、回復を早めることを心がけております。その結果、当院の入院期間は全国平均よりも短くなっています。

 がんの治療においては、患者さま一人ひとりの状態に合わせた最適な治療計画を立て、さまざまな治療法を組み合わせながら、治療を進めていきます。 抗がん剤治療は、通院で治療を受けていただけるケースがほとんどです。

 地域医療の基幹病院としてあらゆる眼疾患の診断・治療に対応しています。対象疾患は白内障、緑内障、網膜硝子体疾患(網膜剥離、糖尿病網膜症、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症、網膜前膜、黄斑円孔など)、角膜疾患、ぶどう膜炎、視神経炎、斜視、弱視などです。眼科の入院のほとんどが手術目的となり、その中でもっとも多い症例は白内障で眼科手術の約81%を占めます。白内障以外で多いのが上記疾患です。

 耳鼻咽喉科では耳、鼻、咽頭、喉頭、頸部など耳鼻咽喉科領域すべての疾患に対応し診療しています。頭頸部外科として、炎症性疾患は元より良性腫瘍、悪性腫瘍の系統的治療(化学療法、放射線治療、手術の三者の併用)や副鼻腔炎の鼻内手術を積極的に行っています。また突発性難聴、末梢性顔面神経麻痺などに対する薬物療法の治療実績も豊富です。

 救急科は山梨県唯一である高度救命救急センターを中心に診療を行っています。当科が担当させていただくのは、重症外傷や熱傷、急性心筋梗塞、脳卒中、心肺停止、薬物中毒などの重篤な方または緊急性の高い方、複数の診療科にわたる重症な方などです。

 また、当科はドクターカーやドクターヘリの運用を担っており、病院外へ医師が出向くことによって救命率の向上を目指しております。当科には年間約2,500人前後の方が救急搬送され、その内約1,500人前後の方が入院いたします。疾患別で搬送が多いのは重症外傷や心肺停止、薬物中毒などです。

3. 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数

 当院のがんに対する治療の目標は、内視鏡治療、外科手術、化学療法、放射線療法といった従来の治療の上に、治療困難な場合には、がんゲノムパネル検査を実施して、それぞれの患者さまにより精緻な治療方針を分析し、選択施行していくことです。外科手術分野では肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌に対するロボット支援下手術が増加してきています。

【胃癌・大腸癌】早期がんを中心とした内視鏡治療や腹腔鏡下手術といった低侵襲手術から、進行がんに対する化学療法を併用した手術までを施行しています。消化器がんの治療では、消化器内科、消化器外科、放射線科、病理科、緩和ケアの各専門医、医療スタッフがカンファレンスを行い、多職種連携してチーム医療を行っています。

【乳 癌】乳癌症例は年々増加してきており、本県では最も多くの患者さまの治療を行ってきました。乳癌に対する外科手術、化学療法、放射線療法のほか、ゲノム診療にも対応し総合的な治療を行っています。治療成績も良好です。

【肺 癌】転移を認めるステージⅣの症例が多い状況のため、ロボット支援下手術や鏡視下手術をはじめとする外科手術、化学療法、放射線療法を組み合わせた集学的な治療を呼吸器内科医、呼吸器外科医、放射線科医が積極的に行っています。

【肝 癌】肝胆膵領域においては、内科、外科の各消化器専門医の連携のもと集学的治療を導入し、進行癌症例や再発症例に対しても根治的治療を目指しています。

4. 成人市中肺炎の重症度別患者数等

 市中肺炎は病院外で日常生活をしていた人に発症する肺炎です。

 重症度は軽症・中等症・重症・超重症の4つに区分されますが、当院で治療を行う患者さんは中等症の割合が56.0%で最も大きく、次いで重症が24.9%です。

 肺炎の患者さんは高齢者が多く、年齢が高くなるほど重症度も高くなる傾向にあり、重症・超重症患者さんの平均年齢は80歳以上となっています(高齢者は重症化予防のために肺炎球菌ワクチンの予防接種が推奨されています)。

5. 脳梗塞の患者数等

 当院は高度救命救急センターを備えており、24時間体制で脳梗塞の急性期医療に対応しています。

 発症から3日以内に入院となる症例が93%を占めており、平均入院期間は16日程度です。また、発症から早期に当院での急性期治療を行った後は、5割程度の患者さんがリハビリ病院等へ転院しています。

6. 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)

 消化器内科で最も多い手術は、胆管結石や癌による胆管閉塞により、胆汁が感染した、いわゆる「急性胆管炎」に対し、内視鏡を用いて胆管にアプローチし、胆管閉塞部に胆道ステントといわれる樹脂製のチューブを留置し、感染胆汁を排泄させ黄疸を改善させています。急性胆管炎では致死的になり得る感染症のため、病態に応じて緊急で行っています。

 2番目に多い手術は大腸ポリープ、腫瘍に対する内視鏡的切除です。4-5cm程度の大きな腫瘍も切除しています。

 3番目に多い手術は早期胃癌に対する内視鏡的切除方法です。2mmのメスを用いて内視鏡で腫瘍を切除します。全国で最も短い入院期間で実施しています。

 4番目に多いのは消化管出血に対する内視鏡的に止血をする手術です。食道や胃、十二指腸の潰瘍などの出血に対し、クリップや高周波電流を使用した内視鏡的止血術です。

 5番目に多い手術は、内視鏡を用いて胆管にアプローチし、結石を除去するもので、結石除去のために胆管と十二指腸の間にある乳頭括約筋を切開し、結石の出口を作ります。

 冠動脈疾患、不整脈、心不全など循環器全般を高度に、万遍なく網羅しているのが当科の特徴です。

 緊急/待機的な冠動脈治療はもちろんのことペースメーカー治療も多くおこなっております。心房中隔穿刺を伴ったカテーテル心筋焼灼は主に心房細動の予防・治療に施行するものです。コロナ禍にもかかわらず症例数は年々増加しております。

 内シャント設置術は、当科及び心臓血管外科の支援を得て実施しています。新規透析導入例のみでなく、血管閉塞例、他院で作成困難例や人工血管移植術についても積極的に行っています。

 一般外科、消化器疾患においては低侵襲な鏡視下手術を積極的に行っており、さらにロボット支援下手術も行っています。術前入院日数・術後在院日数の短縮をめざして外科外来、病棟、患者支援センターと共に努めています。

 乳腺悪性腫瘍手術件数は前年度よりも増加しています。平均術後日数も前年度と比較して短縮しており、今後も県内の乳がん患者さんの治療を遅滞なく進められるよう、努めてまいります。

 呼吸器外科では、主に肺がんや気胸の手術を行っています。肺がん症例では、標準手術とされる肺葉切除術を中心に、早期がんに対する縮小手術、進行がんに対する拡大手術、などあらゆる手術を施行しています。気胸の手術においても当科独自の改良を加え、再発率は1%以下です(全国平均5-10%)。2024年から、ロボット手術や単孔式胸腔鏡手術を開始しており、今後、ほぼ全ての手術をこれら低侵襲手術に移行する予定です。

 心臓血管外科では、弁膜症、冠動脈バイパス手術、大動脈瘤手術などを幅広く行っています。近年増加傾向にある大動脈瘤手術は開胸、開腹法に比較してより低侵襲なステントグラフト法を主に選択しています。成績は安定しており、さらに長期合併症を回避するため術式の工夫を行っています。冠動脈バイパス手術は人工心肺を用い確実な吻合を心がけています。緊急対応を必要とする重症虚血患者が多く、ハートチームで対応しています。僧帽弁逆流症は弁形成を第一選択とし、適応を選んで小切開低侵襲手術を導入しています。また急性大動脈解離症、大動脈瘤破裂、急性心筋梗塞後合併症など緊急手術は常時受け入れ可能な体制を整えています。

 整形外科は四肢の骨折や変形性関節症、変形性脊椎症の手術を主に行っています。高齢者の転倒に伴う骨折の症例が多く、特に大腿骨近位部骨折は寝たきりの原因となるため、準緊急手術として対応しています。それにより早期リハビリテーション介入、転院調整が行えるようになっています。変形性関節症や変形性脊椎症に関しても合併症を伴った症例が多く、他科と連携を密にとりながら安全な手術を心がけています。

 脳神経外科では慢性硬膜下血腫穿頭術が最も多い手術になります。次いで脳動脈瘤手術で最近は血管内治療の症例が増えています。脳動脈瘤手術総数は約40例です。脳内出血は内視鏡下での手術を行っています。

 小児外科の手術は全国的に鼠径ヘルニア根治術が最も多いです。鼠径ヘルニア手術は腹腔鏡での手術と、従来行ってきた鼠径部(足のつけね)を切開して行う手術があり、当院ではどちらにも対応しております。他には停留精巣の手術、さらに、臍ヘルニア(でべそ)、虫垂炎の手術が多くなっています。

  一方で、小児外科では出生後まもない新生児から中学卒業までのお子様に対して、とくに幅広い分野での手術を担当しています。臓器ごとの専門的な知識や技術が必要な疾患の場合は他の診療科の医師と連携をとりながら診断・治療に当たります。また、患児の成長を妨げないような治療計画を立てることが小児外科治療では必要と考えています。

 泌尿器科では、膀胱がん、腎臓がん、前立腺がんの手術を非常に多く行っており、在院日数も全国平均と比べ、大変短くなっています。前立腺がんの手術はほぼ全例で手術支援ロボットを使用しています。また、腎臓がんの手術もほとんどが腹腔鏡、もしくは手術支援ロボットを使用しています。膀胱がんに対する全摘術も多くが手術支援ロボットで行っております。このことにより術後早期に退院可能であり、在院日数は短くなっています。より低侵襲化をこころがけ在院日数の短縮に取り組んでいきたいと考えています。 

 ゲル充填人工乳房を用いた乳房再建術については、術後のドレーン管理を重要視していますので6~10日の入院期間となっています。

 県内唯一の総合周産期センターとして、年間に約100件の母体搬送を受け入れています。 NICUと連携し、妊娠高血圧症候群、切迫早産・前期破水、多胎妊娠、胎児発育不全といったハイリスク症例を中心に年間に約700件の分娩管理を行っています。 県内の双子の赤ちゃんのうち約80%が当院で産まれています。

 当院の婦人科では、患者様の負担を最小限に抑えた最新の低侵襲手術を積極的に導入しています。これにより、良性疾患から悪性疾患まで幅広く対応し、入院期間も全国平均よりも短くなっています。

 特筆すべきは、最先端のロボット支援手術の実績です。当院は全国でもトップクラスの症例数を誇り、その高度な技術と豊富な経験から、他県の医療関係者も多数見学に訪れる有数の施設となっています。このことは、当院で安心して最新の低侵襲手術を受けていただける証でもあります。

 さらに、若年層の悪性腫瘍患者様に対しては、将来の妊娠の可能性を残す「妊孕性温存手術」にも積極的に取り組んでいます。患者様の年齢や希望、症状に合わせて最適な治療法を提案し、生活の質の向上に努めています。

 2023年の手術件数は977件で、その中で最も多い症例は白内障です。次いで多いのが、糖尿病網膜症、黄斑円孔、黄斑上膜、網膜剥離などの網膜硝子体疾患対して行う硝子体茎顕微鏡下離断術です。昨年から導入した緑内障手術(水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術)も件数が増えてきております。

 炎症を繰りかえす習慣性扁桃炎、IgA腎症などの病巣扁桃、睡眠時無呼吸症候群の原因となっている扁桃肥大に対しての口蓋扁桃摘出術を多く施行しています。また耳下腺や顎下腺などの大唾液腺にできる良性および悪性腫瘍の手術、甲状腺癌の手術を多く行っています。

 救急科は、重症外傷に対する開頭、開胸、開腹手術やカテーテルを用いた血管塞栓術を行っております。重症外傷に対する救命のための手術を行えるのは当科の最大の特色と言えます。また、最近では重症外傷での止血目的にクリオプレシピテートの作製と投与を行っております。重篤な呼吸・循環不全の方には経皮的心肺補助法(ECMO)を積極的に導入しており、救命率の向上につなげております。救命された後の呼吸補助のために気管切開術を施行して、長期生存およびADL(日常生活動作)の向上を目指しております。さらにカテーテルによる治療として、発症早期の脳梗塞に対し経カテーテル的脳血栓回収術を脳神経外科と協働で行っております。

7. その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)

“DIC”

 重症例の治療を行っている当院では、入院後に発症したDICに対して治療を行う場合と、入院時より重症な状態を呈している患者さんの治療の双方に対して、リコモジュリンやアンチトロンビンⅢ製剤を投与した治療を行っています。

“敗血症”

 当院は重症症例が多く、なかには敗血症を発症する症例もあります。必要に応じて治療薬の投与や血液浄化療法等の治療を行います。

“手術・処置等の合併症”

 入院契機病名(入院のきっかけとなった病名)と「同一」の発生率が高く見えますが、入院中に手術・処置の合併症が発生することは少数です。術後の創部感染等の他に、透析患者さんのシャントトラブル(透析を行うために必要なシャントが血栓などで閉塞し使用できなくなる)治療(経皮的シャント拡張術・血栓除去術等)を目的とした再入院等も、この指標に含まれています。

1. リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率

 当院では手術を施行した患者以外にもリスク評価を行い、予防が必要な患者に対しては抗凝固療法あるいは間欠的空気圧迫法または弾性ストッキングにより予防対策を行っています。

 また、令和5年度から静脈血栓塞栓症予防部会が設立され、マニュアルや患者さんに配布するパンフレットを作成し、活用することで予防対策に努めています。

2. 血液培養2セット実施率

 当院ではコンタミネーション(常在菌の混入)かどうかの判断のために、血液培養を2セット実施しています。また、陽性菌の検出感度を高めるためにも有用です。(血液培養を1セット実施した場合の検出率は約73%ですが、2セット実施した場合は約93.9%の検出率となります)

 感染管理委員会が中心となって実施率の向上に努めています。

3. 広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率

 広域スペクトル抗菌薬使用前に細菌培養を実施することで、詳細な微生物を特定するようにしています。詳細な微生物が特定されてからは、狭域の抗菌薬に変更し、耐性菌の予防に努めています。

 当院では、感染対策室や薬剤部が中心となって、抗菌薬適正使用支援チームが結成されており、抗菌薬の適正使用を心がけています。

掲載内容に関するお問い合わせ

地方独立行政法人山梨県立中央病院

医事課

電話番号
055-253-7111(代)

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