こころを病んで精神科病院に入院していました。
統合失調症当事者の安藤たかゆきさんが3ヶ月間の精神科病棟入院体験を描いたコミックエッセイです。安藤さんの体験した入院治療は爽やかに、そしていとおしいほどのやさしさで描かれています。入院から退院までが順に描かれているため、精神科病院の入院治療の流れをかいま見ることができます。4章20話から成るこのコミックエッセイが1冊の本にまとまったことがわたしにも自分のことのように嬉しいですし、安藤さんのこれからを心の底から応援したくなりました。
このコミックの最大の読みどころは、保護室に入るシーン。自分ではすっかり病気がよくなっていると思い込み、主治医に退院を申し出たところ、病気の回復はまだ不十分と受け入れてもらえなかった安藤さんは「コノヤロー」などと大きな声を出してイライラを爆発させてしまいます。看護師たちに押さえられて安藤さんは保護室にはいることになりますが「自分は冷静だという意思表示のためおとなしく連行されました。」このような自分の行った行動についての思いがしっかりと語られているところがこのコミックの真骨頂だと思います。
ちなみに保護室に入った安藤さんですが、見事に内省を深め、それまでの無理な自分の生き方を見つめ直すきっかけもつかみます。私は、安藤さんが退院前に感じた不安を通して、精神科の病院へ入院された方々の気持ちについて考えました。入院患者さん同士がお互いをいたわったり励ましあうことが回復の大きな支えになることも知りました。精神科病院へ入院されたみなさんがつらい入院を回復への転機としていけるようにわたしたちスタッフも一生懸命頑張りたいと思います。
(精神科医局 宮田量治)