メニュを開く メニュ
文字サイズ 標準

まさか発達障害だったなんて 「困った人」と呼ばれつづけて

:星野仁彦,さかもと未明
出版社
:PHP新書

 本書は、漫画家、作家、評論家などとして2000年代まで各界で活躍していたさかもと未明さんが発達障害をカミングアウトした書。発達障害に気付かず、つらい人生を送っているひとを助けたいとの思いで書かれたさかもとさんの半生記に、発達障害の専門家である精神科医・星野先生が解説を加えた心に刺さる一冊です。

 ひとと同じように振る舞うことが美徳とされるいまの日本では、ひとと同じようにできない。ただその一点で苦しんでいるひとが沢山いらっしゃると思います。さかもとさんは、本好きで、他の子のようにはしゃいだり遊んだりできず、学校でいじめに遭います。そして両親も、さかもとさんをかばうどころか、母からは「目立つことはするな」「普通になれ」と言われ、酔った父からは暴力を振るわれ、生きることに難しい幼少期を送りました。やさしい父方祖母や親友に支えられながら、さかもとさんは逆境にめげず、大学卒業後にあふれるような才能を開花させました。ところが、活躍の場が広がり過ぎてしまい、永年の過集中や慢性疲労がたたったせいか膠原病を発病。新聞広告で偶然目にした星野先生の書籍広告から自分に精神的な障害があることを疑いました。

 面会した星野先生から「アスペルガー障害(AS)を合併した注意欠如・多動性障害(ADHD)」と診断され、ショックも大きかったさかもとさん。しかし星野先生は、障害を受け入れることで自己肯定できるようになるとのお考えから、さかもとさんを支え、温かく指導しました。「家族」という単位を嫌い、その再生につながる妊娠や出産を頑に拒否してきたさかもとさんでしたが、診断後の生き方はまったく違ったものに変わりはじめました。

 自分の発達障害を肯定したさかもとさんは、49歳の二度目の結婚で、夫とともに人生を学びなおしていると感じているそうです。大好きな両親から愛されようとして、できる限りの努力を続けてきたさかもとさんでしたが、ご両親と会うことを止めてからは、こころ穏やかに過ごされているそうです。「血のつながった家族」でなくても、自分を認めてくれるひとがいてくれて、さかもとさんの生きる力になったことがよく分かります。

(精神科医局 宮田量治)

 

ページの
先頭に戻る