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ほんとに怖いブラックバイト

:あさいもとゆき、かみやナエこ、斎藤ふみ、他
出版社
:宝島社

 学生バイトの定番といえば、ファストフードやレストラン、居酒屋などの従業員、個別指導の塾講師などがありますが、本書には、パン工場、アパレル店員、テレビ局アシスタント、ホテル従業員、引越し業者の助手、はては、着ぐるみバイトやキャバクラボーイなど、15種類のアルバイト体験が読み切りのショートストーリーとして紹介されています。

 昼間授業がある学生にとって、バイトのゴールデンタイムはやはり夕方以降の時間帯。おのずと、深夜から明け方に及ぶような仕事(牛丼店、テレビ局、キャバクラボーイ、コンビニ、ヘルパー)に学生が進出してくるわけです。勤務2日目にいきなり深夜のワンオペ(ひとりで店を切り盛りすること)をまかされた学生(牛丼店)、貸与とあるのに制服代を天引きされた学生(カフェ)、教材準備や記録などにかけた授業時間以外の業務に給料が貰えなかった学生(塾講師)等々、ブラックバイトの事例は語るに事欠きません。本書に登場する事例は「悲惨すぎて笑えます」が、我が身に置き換えてみると、やるせなさや恐ろしさが残るものばかりです。

 「君に任せたぞ!」「自分だけの希望が通ると思うなよ!」学生バイトがまさにブラックになる瞬間があるようです。大人の店長から強く言い切られてしまえば、仕事や業界のことをよく知らない学生は何も言い返せないでしょう。

 困ったことは、事業所の方も、意識的に学生をいじめているわけではないということです。24時間店を開けるために、売上目標を達成するために、そういう大企業の不文律から、実はバイト学生以上に負担を強いられ、倒れる寸前まで働いているスタッフがいる。学生だろうがフリーターだろうが主婦だろうが、相手の事情を考えず、辞めないぎりぎりの線を狙って会社のために働いてもらわざるを得ないブラックな業態が日本に急増しているのです。

 このような業態においては、ただ言われた通りに働くひとは重宝されるでしょう。でも学生バイトだからといって主張をあきらめてはいけません。本書にはブラックバイト問題に取り組む「ブラックバイトユニオン」が協力しており、問題解決のヒントも記載されています。頑張れ!

(精神科医局 宮田量治)

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