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認めて励ます人生案内

:増田明美
出版社
:日本評論社

 新聞・雑誌の定番記事とも言える人生相談は、他人の悩みに各界の著名人がどう回答するのか興味を持って読まれる方も多いと思います。人生相談の回答者は、どんなに難しい質問にも答えを出しますし、不特定多数の読者をなるほどなと思わせるような名答も生まれます。新聞では、不適切な回答にはクレームも寄せられるでしょうから、回答者には、毎回、大きな負担がかかっていると思います。
 さて、読売新聞の「人生案内」の増田明美さんへの質問・回答100件をまとめた本書は、苦労の多いマラソンランナーだった増田さんの優しさや温かさが思いっきり伝わってくる本です。増田さんは、実にたくさんの難問に明確に回答し、タイトル通り、相談者のことをまずは認め、具体的な指摘を行います。Kの指摘が、ときにはかなり厳しいものもあり、ひやひやすることもありますが嫌みはありませんし、最後には必ず励ましています。増田さんのような人が自分のそばにいてくれたらみんな頑張れるでしょうしどんなに素敵でしょう。
 わたしは、本書を読み進めて行くうち、増田さんの「認めて指摘して励ます(タイトルは認めて励ますですが、実際には、認めて指摘して励ますです)」には、ひとに何かお願いをしたり注意したりするときの黄金律だと気が付かされました。まさに、指導者としての心得とも言えますが、ふと、もっと身近な家族に対して、この黄金律を使ってみたらどうだろうかと考えました。そして愕然! わたしは家族にものを伝えるとき、認めるプロセスをたぶん省略していると思います。ああ、増田さんのような関わりは、実は一番身近で、そして大切な家族にこそ、意識的に行うべきではないかと思い始めています。

(精神科医局 宮田量治)

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