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ブラックバイトに騙されるな!

:大内裕和
出版社
:集英社

 2013年に新語として登場した「ブラックバイト」は「低賃金であるにもかかわらず、正規雇用労働者並みの義務やノルマを課されるなど、学生生活に支障をきたすほどの重労働を強いられる」「学生であることを尊重しないアルバイト」のことです。

 本書は、昨今の学生アルバイトの暗黒面について解説された本です。バイトを通して貴重な社会勉強をした、という思い出をお持ちの親御さんは少なくないと思いますが、いまの学生をとりまく状況は以前とあまりにも違うことにまずは驚かれると思います。

 「ブラックバイト」の命名者である大内先生は、毎年恒例のゼミ合宿が行えないほど学生がバイト・スケジュールにしばられていることに疑問を持ち、バイトの実態について調査しました。そこから明らかになったのは、あらゆる業界に蔓延するバイトの闇。シフト管理、原材料の発注、クレーム対応などはもちろん、学生をまるで使いつぶすような労働法無視のアルバイトでした。アルバイトをやめようとすると「就職に不利になる」と脅されて辞めるに辞められない学生もいるそうです。過重なアルバイトに疲弊し、登校できなくなったり、心身を病んでしまうひとも少なくないでしょう。でも、じゃあどうすればいいのか。

 小遣いや送金が足りず、生活費に事欠き、稼がなければ大学へ通えない学生が増えているのが現実です。いまできることは、せめて悪徳な事業所に騙されないこと。本書巻末には、法律事務所が提案した「ブラックバイト度チェック」が掲載されています。これにひとつでも該当したら、ブラックバイトを疑っていいそうです。

 今の時代、ブラックバイトを経験した学生が、そのまま、低賃金と重い責任を課される「ブラック企業」へ就職ということも珍しくないのかもしれません。自分の価値を尊重されない職場での体験を積み重ねていては、生きていくことにも自信がなくなってしまうのではないでしょうか。ブラックバイトは身近にあって、わたしたち全員で考えるべき問題になっているのです。

(精神科医局 宮田量治)

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