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のうだま やる気の秘密

:上大岡トメ & 池谷裕二
出版社
:幻冬社文庫

 やる気がどうしたら出るのか、その秘密が明かされた本です。本のタイトルにある「のうだま」とは「脳球」のことであり、わたしたちの脳内にある淡蒼球(たんそうきゅう)という場所が人のやる気と関係しているためです。
 脳の研究者である池谷先生によると、脳内にある淡蒼球が刺激されるとやる気が起きるそうですが、淡蒼球は脳の奥の方にあるため、直接刺激することはできません。そこで、本書には(1)淡蒼球を刺激するための4つの戦略(からくり編)、(2)出てきたやる気を生かすための16の秘訣(やってみよう編)が順次説明されています。これらを理解して実践すると、いままで長続きしなかったダイエットやジョギング、気の重たかった試験勉強や仕事へのやる気がむくむくと感じられることでしょう。
 本書は文字数も少なく、上大岡さんのイラストには親しみもあって、手に取りやすい分、巷(ちまた)にあふれたハウツー本のようにも見えてしまいますが、最新の脳科学の研究成果を踏まえた学術書であることが類書と一線を画すものとなっています。わたしは、池谷先生が糸井重里さんと著された「海馬 脳は疲れない」(2002年出版)では、やる気を生み出す脳の所在地とされた「側坐核(そくざかく)」が本書ではあっさり淡蒼球に変更されていたことにはやや戸惑いを覚えましたが、やる気の「のうだま」にアクセルを入れる方法は当時とまったく同じ。自分の経験からも本書の内容には普遍性を感じております。
 どうしてもやる気が出ないとき。そういうとき、思うように動けない自分を責めたり悩んだりするより、まずはカラダを動かしてみて欲しいです。それでなんとかクリアできた日が私にはあったような気がします。つまり本書は人生のどん底にいるときでも、知っているだけで生きる勇気が少しだけ湧いて来るような本だと思います。

(精神科医局 宮田量治)

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