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よろしく、うつ病 闘病者からの「いのちがけ」のメッセージ

:覚慶悟
出版社
:彩流社

 著者の覚さんは、うつ病にかかる前に摂食障害(拒食症)にかかり、体重が増えることへの葛藤も抱えていました。そして、40歳を過ぎてから重度のうつ病。三環系抗うつ薬の強い副作用に耐えながらうつ病の治療を続けましたが、妻子と別居、休職を余儀なくされて、復職も順調には進みませんでした。
 本書はまさに、うつ病と闘った覚さんの命がけのメッセージです。本書の随所には、同じ病気に苦しんでいる人(うつ病の同志)へ向けた覚さんの必死の思いや気づきの他、心の支えになるオマジナイなども書かれてあります。ですから、副題にある「いのちがけ」は少しも大げさな表現ではありません。発病から4年余りが過ぎ、周りから支えられてうつ病を克服しつつある覚さんですが、いまうつ病と闘っている人には、自分の行き方を見つめ直しつつ、必ず来るうつ病の回復の夜明けを待つように勧めています。
 覚さんは、うつ病は心の風邪などという生易しい言葉では言い表せない、身体から皮膚を剥ぎ取られるような絶望という拷問だったと述べています。ひとから「こころの風邪」と言われると、うつ病の当事者は、風邪ごときに負けてしまう情けない自分を負い目に感じ、慰めどころか余計に苦しむことになります。わたしを含めて精神保健スタッフは「こころの風邪」という言葉にこのような見方があることを認識する必要もあると思います。
 以下は、文学に造詣の深い覚さんが引用された一節。「お父さんは お前に/多くを期待しないだろう。/ひとが/ほかからの期待に応えようとして/どんなに/自分を駄目にしてしまうか/お父さんは はっきり/知ってしまったから。/お父さんが/お前にあげたいものは/健康と/自分を愛する心だ。」(吉野弘『奈々子に』から)

(精神科医局 宮田量治)

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