「形が少し歪んでいるかも?」「後頭部が絶壁になっている?」などの心配のタネになることも多い赤ちゃんの頭の形ですが、日本では「自然に治る」と言われたり「見た目の問題だけ」だからと積極的な治療の対象となることはありませんでした(頭蓋縫合早期癒合症を除きます)。
米国では赤ちゃんの頭の変形に対する意識が高まっており、歯列矯正と同様に自費診療として“ヘルメットによる頭蓋形状矯正療法”(以下ヘルメット治療)が普及しつつあり、現在では50種類以上のヘルメットが食品医薬品局(FDA)に認可されています。
そういった背景から、日本でも頭蓋変形を気にされる親御様が増え、自費診療でヘルメット治療を提供する病院やクリニックが増えています。このたび当科は、山梨県初のヘルメット治療を行う“赤ちゃんの頭のかたち外来”を開設する運びとなりました。赤ちゃんの頭の形が気になる親御様にとってご助力となりましたら幸いです。
(正式な外来開設日については別途院内広報にてご報告させていただきます。)
赤ちゃんの頭の歪になる原因はさまざまですが、外因性変形 (頭位性斜頭、短頭)と内因性変形(頭蓋縫合早期癒合症)があります。
赤ちゃんの頭の変形の多くは妊娠中や出生後の向き癖による外因性のものであり、内因性のものは稀です。
ときに両者の鑑別は難しく、小児脳神経外科や形成外科の専門医がレントゲン・CT検査などを使って診断をします。
斜頭:頭のどちらか片方が平坦になり、全体を見ると頭が左右非対称に見える形のことをさす医学用語です。“斜頭”自体は病気・病的状態を表す単語ではありません。
短頭:後頭部の隆起がなく平坦な状態を指す医学用語です。日本人には比較的多くみられる頭の形で、一般的には“ぜっぺき”とも表現されます。
赤ちゃんの頭蓋骨は何枚かの骨に分かれており、骨と骨とのつなぎ目を頭蓋骨縫合と呼びます。脳の成長にともない、骨同士が少しずつ癒合することで脳の容積も大きくなっていきます(生後1年で約2倍、大人の約70%の大きさになります)。
頭蓋骨縫合早期癒合症とは頭蓋縫合のどれか、またはいくつかが通常よりも早い時期に癒合してしまう病気です。放置すると頭の変形が残ってしまうだけでなく、赤ちゃんの脳の発達に影響が及ぶ可能性があります。
頭蓋骨縫合早期癒合症を治療するには、適切な時期に頭蓋骨を切る手術を行います。その方法は変形の種類は年齢によって様々ですが、形成外科だけでなく脳神経外科や麻酔科との高度な連携と技術が必要となります。
このように赤ちゃんの頭の変形には早期に治療しないいけないものもありますので、生後数か月で頭の形が気になったら一度医師に相談することをおすすめします。
頭蓋骨縫合早期癒合症のような病的な頭の変形に限らず、外因性の赤ちゃんの頭の変形も早期に治療介入することで結果はよくなります。
重症の斜頭・短頭は年齢の経過で完全には改善しないことも指摘されています。ヘルメット治療を受ける受けないにしても、形が気になったら受診してください。
頭蓋骨縫合早期癒合症との鑑別のために行う頭の形を調べる検査は保険診療です。
外因性の頭の変形に対してはいくつか予防法がありますが、根本的には同じ姿勢で同じ頭の位置に同じ刺激を与え続けないこと、すなわち“除圧”が重要です。軽微な変形であれば除圧を徹底することで改善が期待できます。
前項で書いた通り、頭の形を改善するためには除圧が大事となります。
特注のヘルメットをつけることで、これまで圧がかかりへこんでいた部分を浮かせて除圧が可能となります。
適切な時期にヘルメット治療を開始することで、圧がかからなくなった部分の頭蓋骨はどんどん成長します。
斜頭の場合は、最終的に反対側の盛り上がっていた部分に追いつくように成長が期待できます。
かかりつけの小児科から“こどもの形成外科外来”への紹介状を書いてもらってください。
“こどもの形成外科外来”は予約制で水曜日の午前です。
頭の変形についてスクリーニング検査(保険診療)をおこないます。
外因性変形の赤ちゃんにはヘルメット治療が適応可能です。希望される場合は“赤ちゃんのあたまの形外来”を受診していただきます。
“赤ちゃんのあたまの形外来”は奇数週の金曜日の午後に完全予約制・自費診療となっています。
あたまの外来では改めてヘルメット治療について説明し同意書作成と3Dスキャンを行います。
3Dスキャンを行った段階で一連のヘルメット治療(ヘルメットの作成からサイズ調整と経過観察)に関する費用が発生します。
ReMO baby®(グンゼメディカル)を手依拠しています。
・乳児の変形性斜頭、変形性短頭の改善を目的に使用する除圧タイプのヘルメット
・健常な頭蓋骨に圧迫を加えることなく、平坦部の完全な除圧により、この部分の発育を促します
・外側は硬質プラスチック、内側はフォーム状ライナーを使用
・前方と後方の2つのパーツから成り、調節用のスクリューで頭の成長に合わせてサイズ調節が可能
本邦では乳児の頭蓋変形は成長によって治るとされてきましたが、最近の報告では重度の変形は成長してもそのままであることが明らかとなってきました。
重度の変形は頭の形状だけでなく、耳の位置の左右差が生じるため、将来的に帽子、眼鏡、自転車乗車時のヘルメット着用など日常生活に支障が出る可能性もあります。
定期健診などで頭の形が気になるようでしたら、当科を紹介いただけますと幸いです。