睫毛内反(しょうもうないはん)とは、まつ毛が前を向かず内反して眼球角膜に接している状態を指す言葉です。
小児の逆さまつげとは先天的な皮膚成分の厚みにより生じるもので、内反は上まぶたにも下まぶたにも起き得ますが一般的には下眼瞼の睫毛内反が多いといわれています。
実は、乳幼児でまつ毛が黒目にかかっているお子さんは少なくありません。
特に乳児期のまつ毛は細く柔らかいため刺激や痛みは生じず、また年齢があがると自然とまつ毛が外を向いて改善することが多いのも事実です。
しかし3歳を過ぎてもまつ毛が黒目に接している場合は注意が必要です。
成長により徐々にまつ毛が固くなってくると、角膜を刺激したり傷をつけやすくなって「毎日起きた時に目ヤニがついている」「いつもまぶたをこすって気にしている」という角膜刺激症状を認めるようになります。
こうした症状があるお子さんはぜひお近くの眼科を受診されてください。
必要があれば形成外科で手術をお勧めされると思います。
手術は幼少期に行う場合、全身麻酔となります。
乳幼児期の睫毛内反の発生頻度は約20%、就学前には半減、中高生では数%まで低下するという報告があります。前述の角膜刺激症状がなければ局所麻酔が可能になる年齢まで手術をせずに様子をみてもよいかもしれません。
当院ではかかりつけ眼科からの紹介を受け付けております。角膜の状態によって3-5歳時に手術を行っております。
手術方法の原理は内反した睫毛-瞼板組織を外反させることにあります。
通糸法は簡便ですが再発率が高いといわれているので、睫毛内反の程度が強い場合は適さないと思われます。
形成外科ではHotz変法による皮膚切開を用いた外反矯正が一般的です。
Hotz変法は以下の手順で行います。
ただしHotz変法単独では内眼角部(目の内側)の矯正が不十分、あるいは数%程度の再発があるため、当院では内眼角形成術も併用する場合があります。
アジア人に多い“蒙古ひだ”、目の内側に張り出した分厚い皮膚が、手術の矯正効果を弱めてしまうことがあります。
Hotz変法に加えて、内嘴靱帯を骨膜に固定することで外反矯正効果を高め再発率も下げることができるという報告があります。
当院でも必要があると判断したお子様には内眼角形成術の併用を提案させていただいております。
手術成功の要素は“まつ毛と皮膚を外反させる”ことにありますが、余剰組織を取りすぎると眼瞼自体が結膜ごと外反してしまいます。
この状態は修正困難です。
矯正不足や再発の可能性があっても、これ以上の矯正は危険と判断したときは手術を終了するのが重要です。
内眼角形成術を追加することで、下眼瞼だけでなく内眼角からも矯正力を与えるため外反過矯正のリスクを下げるといえます。
睫毛内反手術は再発率が高いことで知られています。
Hotz変法のみの場合は数%、目の内側の矯正が不十分となり再手術をすることもあります。
角膜への刺激により今まで開けづらかった目がパッチリ開くようになります。
内眼角形成を追加した場合、やや大人びた印象の顔に変わります。
下眼瞼切開部は半年、内眼角部は1年くらいキズアトが目立ちます。
眼輪筋切除の際に出血しやすいため止血操作を行います。
この操作がまつ毛の毛根にダメージを与え一部が脱毛することがあります。