循環器チームは、5名の常勤医師(内4名の循環器専門医)と4名の専攻医にて、急性期治療から亜急性期治療を中心に、365日24時間体制で、最高の医療を提供しています。虚血性心臓病、不整脈、心不全、高血圧、心臓弁膜症、心筋症、肺循環、先天性心疾患、 末梢血管病(両下肢等)を診療対象としています。循環器センターとして、循環器内科と心臓血管外科が密接な連携をとりチーム医療を行っています。2023年の入院患者は979人で、平均在院日数は 8.6日でした(例年と同様でした)。2024年度は、血管造影室の増設、ハイブリッド手術室の新設、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)を開始予定です。
病診連携を重視し、“元気になって早く社会にもどる”ことを目標に診療を行っています。多くの紹介患者、逆紹介にて当科は支えられています。標準的医療を基本とし、さらなる先進医療も取り入れて、up to dateな治療を行う activityの高い診療科です。
日本循環器学会認定専門医研修施設、日本核医学認定専門医教育病院、日本不整脈学会認定不整脈専門医研修施設、日本心血管インターベンション研修施設群、日本超音波医学会認定専門医研修施設
医師/出身大学 | 資格・所属学会等 |
---|---|
院長補佐、内科系医療局長、循環器センター統括部長 梅 谷 健 うめたに けん 山梨医科大学 |
循環器一般、不整脈非薬物治療(アブレーション 等) |
循環器内科部長 佐 野 圭 太 さの けいた 山梨医科大学 |
不整脈非薬物治療(アブレーション、デバイス等)、心血管インターベンション治療 |
インターベンションセンター長 牧 野 有 高 まきの ありたか 山梨大学 |
循環器一般、心血管インターベンション治療 |
医師 |
内科学会専門医 |
医師 |
内科学会専門医 |
専攻医 |
循環器一般 |
専攻医 |
循環器一般 |
専攻医 |
循環器一般 |
専攻医 |
循環器一般 |
小児循環器病センター長 星 合 美 奈 子 ほしあい みなこ 山梨医科大学 |
小児循環器疾患全般、川崎病治療・後遺症、移行期医療、成人先天性心疾患 |
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
2020年 |
2021年 |
2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
冠動脈造影検査 | 495 | 417 | 429 | 420 | 411 |
362 |
342 | 347 | 434 |
冠動脈PCI | 200 | 177 | 204 | 227 | 207 |
223 |
203 |
170 | 183 |
緊急冠動脈造影 |
82 |
84 |
111 |
111 | 97 | 97 |
67 | 57 | 126 |
アブレーション | 91 | 139 | 203 | 300 | 314 |
296 |
309 | 302 | 292 |
内 心房細動 | 54 | 65 | 135 | 209 | 234 |
243 |
246 |
243 | 235 |
Pacemaker(新規) | 57 | 54 | 68 | 66 | 58 |
54 |
54 |
49 | 50 |
植え込み型除細動器 | 12 | 13 | 18 | 22 | 13 |
17 |
10 |
9 | 15 |
(内両心室pacing機能付) | 4 | 6 | 8 | 14 | 4 |
7 |
2 | 1 | 4 |
末梢血管ステント | 16 | 15 | 26 | 18 | 25 |
20 |
21 |
31 | 26 |
表1:冠動脈ステント治療は200例前後でやや減少傾向にあり、アブレーション治療は300例前後で推移している。
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
循環器内科入院患者(人) | 914 | 1009 | 1018 | 948 | 977 | 980 | 979 |
循環器内科死亡患者 | 25 | 23 | 26 | 21 | 27 | 34 | 23 |
表2:毎年1,000人前後の入院患者
図1:虚血性心疾患に対する冠動脈形成術(ステント治療)は年間200例前後の症例で推移し、不整脈に対するアブレーション治療は、年間300例前後の症例を行っている。
虚血性心臓病:
冠動脈形成術は年間200例弱の症例数で推移しています。50-55%の症例が緊急での治療であり、山梨県唯一の3次救急施設として、24時間体制で虚血性心疾患治療に対する緊急冠動脈治療に対応しています。来年度には待望のもう1室の心臓カテーテル室ができます。より多くの緊急症例に対応できると思います。冠動脈の石灰化病変に対するローブレータ治療、太い冠動脈病変に対する粥状硬化を切除するDCAも昨年は4例施行しました。重症の心不全症例に対してはImpella補助循環も昨年より導入しました。
カテーテル治療と同時に、最新の大規模臨床研究でも重視されている厳格な薬物療法(脂質異常・糖尿病・高血圧・抗血小板薬の増量・減量)、生活習慣の改善も積極的に行っています。最近の冠動脈ステント治療の減少傾向は全国的な傾向であり、適切な治療適応と内科治療の進歩の影響であると思われます。
不整脈治療:
カテーテルアブレーション治療を中心に、pacemaker, 植え込み型除細動器(ICD)、両室pacemaker(CRT)、左室領域pacemaker 治療を行っています。アブレーション治療件数は300例前後の症例数で推移しており、多くの紹介患者を受けています。心房細動に対するカテーテルアブレーション治療が約8割を占めています。より安全で、短時間で再発率の低いアブレーション治療を目指し、3-D mapping システム、cryo-ablation (冷凍凝固焼灼)治療を適切に使用しています。
デバイス関連では、リードレスペースメーカー植え込み症例も高齢化の影響で増加しています。ペースメーカーリード抜去にも対応し、生理的ペーシングとして左脚領域ペーシングをはじめました。
心不全:
高齢化、循環器治療の進歩による救命率の向上に伴い、心不全患者は増加しています。確実な薬物療法の徹底、両室ペーシングなどの非薬物治療、心房細動合併心不全に対するカテーテルアブレーション治療、在宅酸素治療などの治療法を組み合わせて最適な治療を積極的に行っています。
近年、高齢化社会において、心不全患者は増加してきています。入院患者の高齢化にともない、複数の基礎疾患を持ち、認知症、呼吸器などの疾患を合併し腎機能低下例も増え(表3)、治療はより複雑になってきています。増加する高齢者の心不全患者を確実に短期間で治療し、早期に外来、かかりつけ医へと連携できるように看護チーム、医療連携室と連携を取りながら治療、早期転院、リハビリテーション、在宅支援を行っています。心不全治療薬の全国治験にも参加しています。
2021年9月より、心不全リハビリ施設認定取得し、院内心臓リハビリを開始しました。毎週の多職種カンファレンス(医師、看護師、リハビリスタッフ)にて、より早期の社会復帰を目指した治療を行っています。
表3:当科へ入院した心不全患者の2010年と2021年の比較( 2023/3日本循環器学会総会にて発表)。心不全患者の高齢化、入院期間の短縮(病診連携の効果)、腎機能低下症例の増加が認められた。
末梢血管/動脈硬化:
骨盤内の血管はじめ、大腿部の狭くなった血管へのステントやバルーンによる治療、最近では薬剤バルーンも使って血行再建を行っています。心臓血管外科、形成外科とも連携して、それぞれの特性を生かしたハイブリット治療を行っています。
研修医教育:
毎年1年目、2年目の初期臨床研修医を受け入れ、実臨床を通して、急性期、慢性期の循環器疾患の重要性を教育しています。診察、clinical chart記載、返書、診療情報作成をルーチン業務として行ってもらっています。心臓カテーテル検査、アブレーション、緊急カテーテル治療にも参加し、様々な経験をしています。2023年度の院内学術発表会では循環器内科部門で2名の2年目研修医の研究発表、2名の1年目研修医の症例発表がありました来年度は3名の初期臨床研修医が循環器内科の内科専門医プログラムに参加をきめました。
学会発表:
論文:
学会発表:
【スタッフ紹介】
星合美奈子 小児循環器病センター長、感染対策室統括部長(平成2年卒)
【科の特色】
当センターは2017年4月に開設され、先天性心疾患、川崎病後、不整脈や心筋症などの小児循環器疾患診療を行なっています。乳児健診や学校検診の二次精査や心原性が疑われる胸痛や失神などの症状精査にも迅速に対応できるよう小児科外来で随時診察しています。
また循環器内科外来で成人先天性心疾患(ACHD)診療を行っており、増加し続けるACHD症例の多様な問題に各科・各部署の協力を得て対応しています。
当院は日本小児循環器学会の小児循環器専門医修練施設でもあり、当院での研修期間は同専門医取得に必要な修練期間として認定されます。現在、日本小児循環器学会専門医2名、修練医1名が在籍しています。
【診療実績・活動報告】
1)乳幼児検診、学校心臓検診等の二次精査
心雑音や心電図異常のため要精検となった乳幼児、児童生徒の精査、治療、経過観察を行っています。特に小学生以上では、学校生活管理票に基づき適正な管理指導を行っています。
2)先天性心疾患、不整脈、川崎病
上記疾患の診断、内科的治療、経過観察を行い、外科治療は当院心臓血管外科をはじめ山梨大学や近県の専門施設と連携しています。ペースメーカーやICD、カテーテルアブレーションが必要な不整脈疾患は、当院循環器内科と連携して診療にあたっています。また、産科、新生児内科とともに、胎児心疾患の診断、周産期・出生後の管理治療を行なっています。2021年1月から12月に、当院NICUで管理された先天性心疾患症例は19例でした。
2017年4月-2021年12月 診療実績 (日本小児循環器学会・年次報告より)
2017年4月-2021年12月 初診症例登録数 (日本小児循環器学会・年次報告より)
4)移行期・成人先天性心疾患症例
循環器病センターとして移行期や成人の主に先天性心疾患診療に取り組んでいます。残存合併症の評価や治療、妊娠・出産等への対応が必要な症例は急速に増加しており、症例に応じて多領域の医師、看護師など各専門スタッフが連携して診療にあたっています。
2022年3月現在、当外来フォロー中の症例数は合計92名に達しました。最近、特に心疾患合併妊娠・出産症例が増加しており、今後、当センターの役割も更に大きくなると考えられます。
循環器内科 成人移行外来 症例構成(2022年3月現在)
青:先天性心疾患 63
赤:不整脈 14
緑:心筋症 8
紫:Marfan症候群 7
合計 92名;
男性:女性 39:53 初診時年齢; 15歳〜71歳
当外来での妊娠・出産管理症例 (2017年4月-2022年3月)
総計;10例 (TOF 2,CoA 1,CoA+VSD 1,LCAPA 1,ASD 2,VSD 1,cardiomyopathy 2)
胎児合併症:1 例、新生児合併症:2 例、母体合併症:4例
【英文論文】
Hirose S, Murayama T, Tetsuo N, Hoshiai M, Kise H, Yoshinaga M, Aoki H, Fukuyama M, Wuriyanghai Y, Wada Y, Kato K, Makiyama T, Kimura T, Sakurai T, Horie M, Kurebayashi N, Ohno S : Loss-of-function mutations in cardiac ryanodine receptor channel cause various types of arrhythmias including long QT syndrome. Europace 2022; 24: 497-510.
Katsumata N, Harama D, Toda T, Sunaga Y, Yoshizawa M, Kono Y, Hasebe Y, Koizumi K, Hoshiai M, Saito T, Hokibara S, Kobayashi K, Goto M, Sano T, Tsuruta M, Nakamura M, Mizorogi S, Ohta M, Mochizuki M, Sato H, Yokomichi H, Inukai T : Prevention Measures for COVID-19 and Changes in Kawasaki Disease Incidence. J Epidemiol 2021; 31: 573-580.
【邦文論文】
星合美奈子 重症川崎病の特徴 川崎病学改訂第2版 日本川崎病学会編集 診断と治療社出版 2021年12月6日発行p105-107.(著書)
【学会・研究発表】
星合美奈子、内藤敦、勝又庸行、長谷部洋平、須波玲、内田雄三、中島雅人、梅谷健 当院における心疾患合併妊娠・出産の現状と課題―地方中核病院からの提言― 第57回日本小児循環器学会学術集会・シンポジウム 奈良県コンベンションセンター・WEB開催 奈良市(2021/7/10)
勝又庸行、加賀佳美、星合美奈子、中村幸介、須長祐人、吉沢雅史、河野洋介、長谷部洋平、犬飼岳史、戸田孝子 ガンマグロブリン不応川崎病に対するインフリキシマブの神経学的中長期予後 第57回日本小児循環器学会学術集会 奈良県コンベンションセンター・WEB開催 奈良市(2021/7/10)
勝又庸行、星合美奈子 川崎病冠動脈障害の遠隔期管理 バスキュラーボード 山梨県立中央病院 甲府市(2021/11/15)
藤原弘之、吉沢雅史、須長祐人、河野洋介、長谷部洋平、原間大輔、星合美奈子、犬飼岳史、戸田孝子 嗄声を契機に診断された特発性肺動脈性肺高血圧症(iPAH)の1例
第124回日本小児科学会学術集会 国立京都国際会館・WEB開催 京都市(2021/4/21)
【その他(座長・講演会・司会・報道等)】
座長 星合美奈子 研修医発表・小児 第47回山梨総合医学会 山梨県医師会館、山梨(2022/3/14)