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口唇口蓋裂外来

口唇口蓋裂とは

はじめに 

 胎児がお腹のなかで発達成長するときに、顔は左右から伸びるいくつかの突起が癒合することによってつくられています。この癒合がうまくいかないと、その部位に裂け目が残ってしまいます。口唇口蓋裂とは、口の周りに生まれつき裂け目がある状態をいいます。

 日本人においては500~600人に1人の割合で発生するといわれています。現在では治療法が確立されつつあり、適切な時期に適切な治療を行うことで、機能的な障害を残すことなく社会生活を送ることができますのでご安心下さい。

症状

 口唇口蓋裂は口唇(くちびる)、顎堤(はぐき)、口蓋(口の中の天井部分)に裂け目がある状態ですが、様々な程度があります。

 口唇裂は上唇に裂け目があるものです。くちびるだけが裂けているものや、くちびるを越えて鼻のほうまで裂けているもの、鼻の前方が口が交通しているもの、歯茎まで裂けているもの(顎裂)などがあります。

 口蓋裂は、歯に近い側=硬口蓋だけのもの、のどに近い側=軟口蓋だけのもの、硬口蓋から軟口蓋まで裂けているものなど程度は様々です。約半数は口唇裂を合併しており、いわゆる口唇口蓋裂とはこの状態を指します。

3つの形成手術

 口唇裂・口蓋裂・顎裂に対して3つの基本手術を行います。
 ※この3つ以外には、瘢痕修正術・骨切り術などを成長や変形に合わせて検討します。

 一つ目は口唇形成術。
 生後3か月~6か月以内におこなうことが一般的ですが、全身状態が不安定なお子様や合併疾患を持ったお子様は、それに基づくリスクが軽減されるまで手術時期を待つことになります。

 二つ目は口蓋形成術。
 生後1年~1年半におこなうことが一般的です。硬口蓋閉鎖時の出血が多いため当院では術後ICU(集中治療室)で1泊の経過観察を行っています。

 三つ目は顎列部骨移植術。
 乳歯が生え始めたら小児矯正歯科をご紹介し、反対咬合などに対して歯列矯正をすすめていただいております。永久歯への生え変わりの時期に、顎裂部への腸骨海綿骨(こしの骨)移植を予定いたします。至適時期は個人差が大きく、早い場合は6-7歳ですが8-10歳で行うこともあります。 

手術以外の治療

口唇口蓋裂の診療では、形成外科の手術に加えて、成長に合わせたフォローアップ(発達評価・中耳炎の予防・言語習得・歯並びの矯正)が必要となります。そのために小児科・耳鼻咽喉科・リハビリテーション科・矯正歯科と協力して包括的な診療を提供します。

診療の流れ

  1. 出生前診断と説明
  2. “こどもの形成外科” 受診
  3. 手術時期の決定
  4. 術前検査・麻酔科受診
  5. 関連診療科の案内

出生前診断と説明

 近年ではエコー検査による出生前診断が増えています。当院産科医師よりご紹介をいただいた方には、出生前に一般的な口唇口蓋裂の知識についてお話をさせていただいております。出生から入院中に児の初診を行うことで安心感をもって退院できるというお声をいただいています。

 それ以外の患者さまについては、かかりつけの小児科などから“こどもの形成外科”あてに紹介状を作成していただき初診となります。口唇手術の予定を立てるためにも、生後1か月以内の受診をお勧めいたします。

 こどもの形成外科:毎週水曜AM

“こどもの形成外科” 受診

 こどもの形成外科では初回手術時期を検討するとともに、お子様に対する質問疑問にお答えしています。

手術時期の決定

口唇裂:生後3-6か月

口蓋裂:生後1~1歳半

顎裂:7-10歳 永久歯に生え変わるタイミングで

術前検査・麻酔科受診

 採血・胸部レントゲン・心電図で全身麻酔が可能か判断します。その後で麻酔科を受診していただき全身麻酔に関する説明を受けていただきます。

関連診療科の案内

 小児科:当科では口蓋形成術の術後にICU(集中治療室)で鎮静をかけながら安静を保ちます。より安全な鎮静をかけるために小児科医師に併診を依頼しています。手術が決まりましたら小児科への受診をお願いしております。

 耳鼻咽喉科:口蓋裂のあるお子さんでは口蓋帆張筋という“耳抜き”をしている筋肉の走行に異常があり滲出性中耳炎をおこしやすくなっています。1歳で行う口蓋形成術でこの筋肉の走行を治しますが、すぐに筋肉の動きが出るわけではありません。耳鼻咽喉科では口蓋形成術と同時に鼓膜切開とチューブ留置を行い中耳炎を予防をします

 リハビリテーション科:口蓋裂手術では口蓋咽頭筋の走行を治して鼻咽腔閉鎖機能を改善させます。その後に言語治療を行うことでより良い発音機能を獲得できます。当科ではリハビリテーション科所属の言語療法士による言語療法を提供しています。

患者の会

山梨県には“クローバーの会”という口唇口蓋裂のお子さんたちとその親御さんが交流・情報交換をするための家族会があります。

  1. 口唇口蓋裂児を持つ家族が相互に情報交換でき、子育ての不安が解消できる。
  2. 口唇口蓋裂やその治療等について理解を深め、自信を持って子育てできる。
  3. 医療制度の改善や、口唇口蓋裂に対する社会的理解の促進を目指す。

3つの理念のもと交流会や研修会を行っていますので、ご興味のある方はFacebookをのぞいてみてください。

※コロナ禍以前は形成外科医師と矯正歯科医師を交えた研修会を行っていました。

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