泌尿器科とは、外科の一分野であり、尿の通り道(腎臓、尿管、膀胱、尿道など)と男性生殖器(精巣、前 立腺など)の病気を担当します。当院では、基幹病院としての性格上、主にがんなどの手術療法を中心に行っております。近年、泌尿器科の手術は、体に数 箇所穴を開け、そこからカメラや器具を入れて手術する腹腔鏡手術が主流になってきました。当科でも副腎、腎臓、尿管、前立腺の手術は腹腔鏡手術で行うこと が増えています。
平成28年からは、前立腺がん、腎臓がんの手術に対して、腹腔鏡手術支援ロボット「ダヴィンチXi」を導入いたしました。 ダヴィンチXiは現在本邦で使用されているダヴィンチシリーズの中では最新の機能を持ち、 甲信越地方で初めての導入となりました。
・創口が小さい
ロボット手術は鉗子用の小さい穴を6箇所開けて行います。従来の前立
腺がんの手術と比べ目立たず、術後の痛みも軽減します。
・出血が少ない
従来の手術と比べ、出血量がはるかに少ないです。術後の早期回復に
つながります。
・繊細な鉗子の動き
多関節ロボット用鉗子は、まさに術者の手と同様、自由に動きます。
狭い骨盤内で正確で繊細な手術が可能となります。特に切る、縫う
といった動作において、ヒトでは不可能な繊細な動きが可能です。
・良好な3D High Vision による視野
術者は、ロボットを操作するコンソールに座り、拡大された良好な立体
画像を見ながら手術を行うことができます。3次元による正確な画像情報
を取得できるため、より安全かつ侵襲の少ない手術が可能となります。
今日、前立腺がんの罹患率は急激に上昇しており、2015年には患者数が
98、400人と男性がんの中で最も多くを占めるがんとなりました。 前立腺がんには、前立腺特異抗原(PSA)という優れた腫瘍マーカーがあります。前立腺がん検診ガイドラインでは、 50歳を過ぎたらPSAを検診にて測ることが望ましいとされます。一般にPSAの正常値は4.0 ng/mLとされています。 高値を示した場合は前立腺癌の疑いがあります。泌尿器科専門医にご相談ください。 前立腺がんの診断確定には、前立腺生検が行われます。当院では1泊2日で前立腺生検を行っております。
前立腺がんの治療には主に手術、放射線、薬物治療があります。一般に、転移のない場合は手術もしくは放射線が勧められます。がんの状況によってはしばらく 経過観察を行うこともあります。転移のある患者さんや、高齢の患者さんには薬物療法がおこなわれます。最適な治療方法は患者さんごとに異なるため、主治医 と相談して決めていきます。
当院における前立腺がんに対する手術の比較です。従来の開放手術と比較しロボット手術では出血量が非常に少ないのが特徴です。また術後病院で過ごす日数にも違いがあります。
腎臓がんは、がん全体の2%を占める比較的まれながんと言えます。治療は、基本的に手術で摘出することです。以前は腎臓がんの手術は腎臓を全部摘出するこ とが一般的でした。近年、比較的小さな腎臓がんに対して、がんの部分のみを摘除する部分切除術が行われるようになりました。
腎部分切除術 腫瘍部分を切除し、切除した欠損部分を縫い合わせる
腎部分切除術に対して、ロボット手術が保険適応になりました。 当院でも
平成28年6月から行っております。
肉眼的血尿を主症状として発見されることの多い膀胱癌は、その性質から、非浸潤癌と浸潤癌に大別されます。非浸潤癌の場合、経尿道的内視鏡手術により根治が得られますが、浸潤癌になった場合、転移がないという前提で膀胱全摘術が標準治療として行われ、開腹手術・腹腔鏡下手術・ロボット支援手術があります。
男性では前立腺を同時に摘除します。女性では原則として子宮・卵巣・膣前壁を同時に摘除します。膀胱を全摘除した後は、尿路変更といって、尿の排泄する経路を作成します。一般的には回腸導管造設、回腸利用新膀胱造設、尿管皮膚瘻造設などの尿路変更を行います。がんの状態や年齢、全身状態、腎機能障害の程度や手術歴などを考慮し術式を決定します。
開腹手術による膀胱全摘除術は出血量が1000ml前後と比較的多く、手術後に起きる合併症(腸閉塞や創感染症など)も比較的多いことが問題点でした。平成30年よりロボット支援腹腔鏡下根治的膀胱全摘除術(RARC)が保険適用となり、当科でも令和2年10月よりRARCを開始しました。
従来の開腹手術と比べると、出血量が少なく、手術後普通の食事を再開できるのがより早く、入院期間がより短いなど、良好な結果を得ています。
近年の泌尿器科手術は、ロボット手術、腹腔鏡手術といった“低侵襲手術”が主流となっております。当科でも、多くの手術で低侵襲手術をおこなっており、その件数は急激に増えています。また、それに伴い、入院日数は減っています。
「小さく切って、早くおうちに帰る」をモットーにしております。
令和4年に行った主な手術の件数は次のとおりです。
腹腔鏡下腎・尿管悪性腫瘍手術 | 36 |
腎・尿管悪性腫瘍手術 | 7 |
腎部分切除術(ロボット支援) | 15(12) |
腹腔鏡下副腎摘除術 | 6 |
膀胱全摘除術+尿路変更術(ロボット支援) | 9(5) |
前立腺全摘除術(ロボット支援) | 69(69) |
陰嚢水腫根治術 | 10 |
経尿道的前立腺切除術 | 19 |
経尿道的膀胱腫瘍切除術 | 144 |
膀胱結石手術 | 14 |
精巣悪性腫瘍手術 | 3 |
体外衝撃波結石破砕術 | 69 |
超音波ガイド下前立腺生検 | 236 |
医師/出身大学 | 所属学会 | 資格 |
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部長 鈴木 中 すずき あたる 信州大学 (平成18年卒) |
日本泌尿器科学会 日本癌治療学会 日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 日本内視鏡外科学会 日本排尿機能学会 |
日本泌尿器科学会専門医・指導医 |
医師 大池 洋 おおいけ ひろし 信州大学 (平成28年卒) |
日本泌尿器科学会 |
日本泌尿器科学会専門医 ダヴィンチ surgeon 資格 |
医師 |
日本泌尿器科学会 |
ダヴィンチ surgeon 資格 |
医師 信州大学 |
日本泌尿器科学会 | ダヴィンチsurgeon資格 |
専攻医 信州大学 |
日本泌尿器科学会 |