わたしたちの皮膚は、なんらかのキズを負った際に、そのキズが治った後にもキズアトが残ることがあります。
一般的に、手術痕や深いやけどのような“深いキズほどキズアトが目立つ”傾向がありますが、ニキビや虫刺されのような軽いキズでも体質によってはキズアトが目立つ人もいます。ひとつひとつのキズアトが小さくても広範囲に残ったキズアトは目立ってしまいます。
キズ・キズアト外来は、キズの性状を理解しながら治癒させ、残ったキズアトに適切な後療法をおこなうことで、瘢痕を最小限に抑えるための外来です。
もちろん長年悩まれているキズアトに対しても加療させていただいておりますので、かかりつけの外科・整形外科の先生から紹介状をもらって受診ください。
キズアトは正常な過程では、おおよそ1年かけて赤色からもとの皮膚の色に近づいていきます。
このようなキズアトを「成熟瘢痕」といいますが、正常皮膚色と比べてやや白かったり、周囲よりへこんでいたり、幅が1㎜以上あったり、さまざまな要因で目立つことがあります。
一般的に症状はなく、その“見た目”が治療の適応となります。
現在の保険診療の範疇では“目立たないキズアトをさらに目立たなくさせる”ことは難しいですが、レーザーの進歩により昔よりも瘢痕診療の幅は広がっています。
当院では瘢痕へのレーザー治療は行っておりませんが、手術できれいになる場合もあります。気になるキズがある方はご相談ください。
キズアトは通常2、3か月で炎症が落ち着き始めて白く柔らかくなり始めますが、この時期に赤いみみずばれのような盛り上がりになっている方は「肥厚性瘢痕」の状態かもしれません。
一度、異常瘢痕として完成してしまったキズアトはなかなか炎症が引きません。
完全に炎症が引くまでに1年から5年くらいかかることもあります。
肥厚性瘢痕・ケロイドになってしまう要因はさまざまですが、これまで何かしらのキズが目立つキズアトとなった経験のある方は、キズ・キズアト外来を早期に受診されることをお勧めいたします
関節部分にかかる瘢痕は、常にキズアトに緊張がかかるため異常瘢痕となりやすい状態にあります。
こうした関節部分の瘢痕はときに皮膚のひきつれを強く感じて関節の動きも固くしてしまいます。固くなった状態は「瘢痕拘縮」と呼ばれます。
時間経過で改善することが少ないため、何らかの手術をおこない緊張を緩和させることが重要となります。
キズアトが通常の経過で成熟瘢痕とならずに異常瘢痕となってしまうのは、上記の要因により炎症がずっと続いているためです。
キズの深さ・場所・治り方をみれば、どのようなキズアトになるか、ある程度予想が可能です。
深いキズ、具体的に言うと真皮の深いところまでキズが達すると、キズアトは目立つ可能性が高くなります。
真皮の深いところには表皮をつくる場所があるため、と考えられています。
関節部分などよく動く場所、下腹部や肩などの骨が触れる部分はキズが目立ちやすい傾向にあります。
キズアトへの緊張がかかりやすいため、と考えられています。
キズの治りが遅いと異常瘢痕となるリスクが上がります。
これは炎症細胞がより多く発生し、キズを治すためにより多くの繊維ができてしまうためです。
上記の状態は異常瘢痕を増悪させる要因として知られています。全身の血流を増加させるからだの働きは、瘢痕への血流供給を増やし炎症を長引かせるからと考えられています。
ケロイドは必ず遺伝する、というわけではありません。
しかし、人種によってキズアトの目立ち方に差があることは知られています。
家族内に異常瘢痕の経験がある方はケロイド体質かもしれません。
これから手術を受ける方でケロイドや肥厚性瘢痕の家族がいらっしゃって自分も不安という方は、当外来受診をおすすめいたします。
外科的治療・レーザー治療・それ以外(保存療法)があります。
瘢痕拘縮はキズアトにかかる緊張が強く皮膚のひきつれが強いため、瘢痕の外科的切除と皮弁や植皮による物理的な緊張解除が必要であることが多いです。
瘢痕拘縮以外では、保存療法を複数組み合わせて2-5年の長期経過でキズアトの痛みや盛り上がり、赤みを治していきます。